研究課題/領域番号 |
16K11471
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
舩橋 誠 北海道大学, 歯学研究科, 教授 (80221555)
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研究分担者 |
久留 和成 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (00592081)
前澤 仁志 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (80567727)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 摂食行動 / 嘔吐 / 悪心 / 最後野 / 催吐薬 / 味覚嫌悪学習 |
研究実績の概要 |
最後野ニューロンの化学感受性を調べる実験を開始した。新鮮脳スライス標本の作製とノマルスキー微分干渉IR-DIC 観察用顕微鏡下に設置した脳スライス中の最後野ニューロンからのパッチクランプ記録は,我々が従来から行ってきた方法を用いている。平成28年度の実験ではGlucose-sensing neuron (GSN:ブドウ糖検出ニューロン)を電気生理学的に同定した上で,各種薬物や伝達物質,さらに食欲関連ホルモンに対する感受性を調べるとう方向で進めた。その結果,GSNの活動を計測するためには,パッチ電極内液に含まれるATPが細胞内に漏れ出すことにより細胞内ATP濃度が上昇し,ATP感受性Kチャネルが閉じて膜の脱分極が生じるため,その後に投与したグルコースによる応答が検出できないことが判明した。そこで,本研究の遂行には,アンフォテリシンBを電極内液に入れて行う穿孔パッチ法を用いて行う事とした。この方法を適用して神経活動(膜電位,シナプス電位等)の安定な記録を行うべく試行錯誤を行った。数例の記録に成功したところで当該年度が終了した。 電気生理学的実験と並行して,トコンの催吐作用における用量反応関係と50%効果濃度を調べる実験を行った。トコンの腹腔投与による悪心誘発の程度について味覚条件付けを指標にして調べた。トコンシロップ(0.5~30 mg/kg,i.p.),アポモルヒネ(10 mg/ml/kg, i.p.),塩化リチウム投与(0.15M with DW,2%/kg, i.p.)により内臓不快感惹起し,0.1%サッカリン水溶液に対する味覚嫌悪学習の獲得を指標に悪心誘発について解析を行った。トコンに含まれるエメチンにより強い悪心が引き起こされ,用量依存性について詳細を解析し始めたところで当該年度が終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最後野ニューロンの化学感受性を調べる電気生理学的実験とトコンの催吐作用における用量反応関係と50%効果濃度を調べる行動学的実験を開始して,すでにいくつかの新たな知見を得た。当初,最後野ニューロンのグルコース応答性については,従来の方法であるホールセルパッチクランプ法によって解析できると考えていたが,当該年度の研究成果によって穿孔パッチ法を用いることが有効であることが判明したため,これを用いての実験に修正した。この方法は従来の方法と比べると手技の難易度が上がり,成功確率も低下するものの,解析したい現象を捉えるために最善と判断されたためこちらを採用した解析に着手した。試行錯誤の末,当該年度中に安定な記録を行う事が可能となり,既に数例の記録を行ったところである。行動学的実験については個体差等を考慮する観点から,解析する標本数をある程度そろえる必要があるため,当該年度中における実験数は十分ではなく,次年度において継続して実験を行うことによって,標本数を確保して統計学的に結論を導くことが可能になると考えられた。このような状況に鑑みて,上記のとおりおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり,28年度の研究成果を発展させるべく継続性のある実験を行っていく予定であり,これは29年度の研究計画との連続性および関係性において極めて整合する計画であり,着実に29年度の研究成果を導くものと考えられる。最後野ニューロンのグルコース応答性については,従来の方法であるホールセルパッチクランプ法から穿孔パッチ法に修正して実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物(ラット)の使用数が当初の予定数よりも下回ったことと,必要な薬品,試薬についてより安価なものを調達することができたため,62,878円の繰り越し予算が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の実験動物の匹数を当初よりも引き上げる必要があり,実験動物(ラット)の購入および飼育料に充当する。
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