研究課題
本研究では、マルチドメインタンパク質 PRIP のインスリンシグナル経路における役割の解明を目指した。PRIP欠損(KO)マウスを用いて脂肪組織におけるインスリンシグナル経路を調べたところ、PRIPの欠損による脂肪組織のみのインスリン抵抗性が引き起こされたことが分かった。PRIP-KOマウスでは、IR(インスリン受容体)のエンドサイトーシスが促進され、脂肪細胞膜表面のIRの発現量が減少したことがわかった。脂肪細胞に分化させた3T3L1細胞を用いて、PMAの刺激でProtein Kinase Cを活性化させたところ、IRS-1(インスリン受容体基質)のh1101/m1097とh636/m632番のセリン残基がリン酸化され、細胞表面ビオチン化アッセイにより細胞膜表面のIRが減少したことがわかった。siRNAを用いてIRS-1の発現を抑制すると、細胞膜表面のIRも同様に減少した。また、MEF細胞を用いた実験を行ったところ、インスリンやPMAの刺激によるIRSのh1101/m1097とh636/m632番セリンのリン酸化がWTと比べてPRIP-KO の方が亢進してた。プロテインホスファターゼ1とプロテインホスファターゼ2Aの阻害剤であるCalyculin Aで処理すると、WT MEFにおいてIRSのセリンリン酸化レベルが上昇したが、PRIP-KO MEFでは見れなかった。以前の結果を踏まえて、PRIP欠損マウスでは、IRS-1のセリン残基の脱リン酸化が抑制され、亢進したままのリン酸化がさらにIRのエンドサイトーシスを促進したことが明らかになった。一方、骨格筋に関して、インスリンの刺激によるインスリンシグナル経路のシグナル分子のリン酸化がPRIPの有無で変化が認めなかったが、IGF-1の刺激で引き起こしたAktやS6Kなどのリン酸化がPRIP-KOマウスにおいて抑制されたことが分かった。
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