研究課題/領域番号 |
16K11481
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
根本 優子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (10164667)
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研究分担者 |
根本 孝幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (90164665)
下山 佑 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (90453331)
馬場 友巳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60189727)
小早川 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 技術職員 (10153587)
木村 重信 関西女子短期大学, 歯科衛生学科, 教授 (10177917)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯周病菌 / ジペプチジルペプチダーゼ / 生理活性ペプチド / DPP4 / 糖尿病 / インクレチン |
研究実績の概要 |
歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)遺伝子に30%以上のアミノ酸配列相同性を示す遺伝子ホモログは723種あり,そのうちHOMD(688 taxa)には37菌種が対応することを明らかにした。内訳は嫌気性菌が21菌種で多数を占め,好気性菌が12菌種,炭酸ガス要求菌が4菌種であった。グラム陰性嫌気性菌はBacteroides, Porphyromonas, Prevotella, Tannerellaの4属で,これらの細菌は歯肉縁下プラークに生息し,歯周病の原因菌の多くがDPP4活性を有する可能性を見出した。これらのうちで主要な歯周病原菌とされるP. gingivalis, Tannerella forsythia, Prevotella intermediaについてより詳細な検討を行い,菌体結合性のDPP4活性を測定し,組換えタンパク質を発現性した。細菌DPP4はN末端からジペプチドを切断し,P1アミノ酸残基がPro特異的であり,P1 Ala残基に対しても弱いながら分解活性を示すこと,また,ヒトDPP4阻害剤(P32/98,Sitagliptin, Vildagliptin)によって阻害されることから,活性中心の3次構造がヒトDPP4に類似することを示した。標的となる生理活性ペプチド探索として,in vitroでのペプチド分解についてMALDI TOF質量分析で検討し,細菌由来DPP4がインクレチンペプチドのN末端ジペプチドを分解し不活化する結果を初めて示した。さらに,マウス動物モデルにより歯周病原性細菌DPP4の生理活性について検討し,DPP4投与によりインクレチンが分解し高血糖となる結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベース検索から歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis DPP4のオルソログを有する口腔細菌は主に嫌気性菌であることから,歯肉縁下プラークに生息する細菌であることを明らかにした。それらのなかで,最重要歯周病原菌であると考えられるTannerella forsythiaがDPP4活性を保有し,Prevotella属菌もDPP4活性を発現することは注目に値する。P. gingivalis, T. forsythia, P. intermedia菌体でのDPP4活性を測定し,さらに組換えタンパク質を発現精製し,それらの生化学的,酵素学的特性を明らかにした。組換えタンパク質が得られたことから,標的となる生理活性ペプチド分解についてMALDI TOF-MSでの解析を行い,細菌由来DPP4がインクレチンペプチド(glucagon-like peptide-1,glucose-dependent insulinotropic polypeptide)を分解することを初めて示した。In vivoでの活性を明らかにするために動物モデルでの解析を実施し,細菌由来DPP4がマウス血中のglucagon-like peptide-1を分解する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
P. gingivalisが有するジペプチジルペプチダーゼ遺伝子について,薬剤耐性遺伝子カセットを用いたDNA断片エレクトロポレーション法により種々の遺伝子破壊株を作成する。野生株,単一ペプチダーゼ遺伝子欠損株(dpp4,dpp5,dpp7,dpp11,aop),多重ペプチダーゼ遺伝子欠損株(前述4種のDPPのダブル,トリプル,クアトロ欠損株),及びジンジパイン欠損株(KDP136; kgp rgpA rgpB, porT欠損株),また,それぞれの組換えタンパク質を用いて,糖非発酵性であるP. gingivalisのペプチダーゼ分解活性について基質特異性,及び各種のペプチド分解能に及ぼすDPPの寄与について検討し,対象となる生理活性ペプチドの探索を進める。
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