研究課題
口腔細菌ペプチダーゼの基質となる全身疾患関連生理活性ペプチド探索の基盤研究として,(1)蛍光標識合成ペプチド基質の分解,および基質ペプチド,タンパク質分解の質量分析による検討,(2)マウスモデルによる血糖値調節機構の解析,(3)口腔細菌叢におけるペプチダーゼ遺伝子の分布と酵素活性の検討を行い,以下の成果を得た。歯周病菌Porphyromonas gingivalis(Pg)および関連菌のジペプチジルペプチダーゼ(DPP)4,DPP5, DPP7, DPP11組換え体を発現精製し,合成基質に対する酵素学的パラメーターを決定した。DPP4によるインクレチンペプチド(GLP-1,GIP)分解を質量分析で解析した結果,PgDPP4,およびその他の歯周病菌DPP4はヒトDPP4と同様にインクレチンをすみやかに分解した。グルコース経口投与マウスモデル実験による検討から,グルコース経口負荷後の血中活性型GLP-1とインスリン濃度は歯周病菌DPP4投与により明らかに低下すること,また,これら因子の濃度低下に伴い,食後高血糖の有意な上昇が起こり,加えて,標準血糖値への復帰が大幅に遅延することが明らかになった。その他の検討を含め,歯周病菌DPP4による宿主血糖調節機構の修飾が起こることが明らかになり,DPP4-インクレチン分解を介した歯周病-2型糖尿病連関の新規の分子機序を提唱した。口腔細菌叢データペース(eHOMD)とKEGGオルソロギーデータベース他の検索から,全口腔細菌のうち,歯肉縁下プラークを構成する嫌気性バクテロイデス門の菌種のみがdpp遺伝子を有することが明らかになり,歯周病-全身疾患関連にこれら細菌ペプチダーゼ分解系による生理活性因子の分解が関与する可能性が示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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