研究課題/領域番号 |
16K11482
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
齋藤 充 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50347770)
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研究分担者 |
倉本 恵梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60467470)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三叉神経中脳路核 / シナプス伝達 / グルタミン酸 / AMPA型受容体 / Hチャネル / 微小ドメイン |
研究実績の概要 |
歯根膜機械受容器や閉口筋筋紡錘を支配する一次感覚ニューロンで或る三叉神経中脳路核(MTN)ニューロンは、種々の神経伝達物質作動性ニューロンの入力を受けている。主要な興奮性入力のひとつとしてグルタミン酸がAMPA型受容体(AMPAR)に結合して生じる興奮性シナプス後電流(EPSC)が挙げられる。偽単極性の形態である同ニューロンの細胞体はほぼ球形で、その表面には無数の微絨毛様突起が発達しているが、研究代表者らの先行研究から、これらの突起はナトリウムイオンの微小ドメインとして機能することが判明していた。今回、全細胞パッチクランプ記録下のMTNニューロンにグルタミン酸をパフ投与して得られた電流/電位波形の解析、数学的なシミュレーション、及び、免疫電子顕微鏡法による組織学的探索の結果、MTNニューロンの微絨毛様突起にはAMPARと過分極活性化型陽イオンチャネル(Hチャネル)、ナトリウム-カリウムポンプが共在しており、膜の過分極或いは薬剤によってHチャネルが活性化された状態では、マイクロドメインのナトリウムイオン濃度の上昇によりグルタミン酸によるEPSCが大きく減弱され、興奮性シナプス伝達が抑制されることが示された。生体内では、Hチャネルを活性化する入力系の活動が高まった状態でAMPAを介する入力がキャンセルされ、逆にHチャネルを不活性化する系が働いている際には入力が有効となることが想定される。この機構は、一次感覚ニューロンであり、同時に、主に咀嚼筋運動ニューロンへの情報伝達経路での介在ニューロンとしても働くするMTNニューロンの「機能モード」を切換える最も主要なスイッチとなっていることが示唆される(Front. Cell. Neurosci., 12:113, 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験設備の整備が様々な原因から計画通りに進まず、研究計画全体に若干の遅れを生じている。現在は原因となった事象が解決されつつあるため、平成30年度の早い内に整備を終え、遅れた分を可及的早急に取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
電気生理学的実験に依存する部分は当初予定よりも大きく進展したため、平成30年度はウィルスベクター法を用いた組織学的解析を進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の若干の遅れに伴い、主に、購入を予定していた備品・消耗品が未購入となっていることに因る。それらの物品を次年度の早い内に購入する見込みである。
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