研究課題/領域番号 |
16K11489
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
中山 希世美 昭和大学, 歯学部, 講師 (00433798)
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研究分担者 |
井上 富雄 昭和大学, 歯学部, 教授 (70184760)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒスタミンニューロン / チャネルロドプシン / 三叉神経運動ニューロン |
研究実績の概要 |
ヒスタミンによる摂食抑制に、口腔感覚や咀嚼運動がどのように関与しているのか調べるため、今年度の研究実施計画では、摂食行動によりヒスタミンの放出をもたらす神経経路についての実験を行うことになっていた。しかしながら、実験に使用するウィルスベクターの購入が遅れたため、ヒスタミンが咀嚼運動をどのように調節するのかを明らかにするための実験を先に行った。 ヒスタミンニューロンに特異的にCre遺伝子を発現するHDC-Creマウスと、青色光を照射することによって陽イオンを細胞内に輸送するタンパクであるチャネルロドプシン2(ChR2)をもつloxP-ChR2マウスを掛け合わせることによって、光刺激によりヒスタミンニューロンを選択的に活動させるHDC-ChR2マウスを作成した。まず、このようなマウスで、ヒスタミンニューロンに光刺激をすることによって、細胞の興奮が見られるかどうかを調べた。生後1週齢のHDC-ChR2マウスを用いて、視床下部を含む前頭断スライス標本を作製した。ヒスタミンニューロンが局在する視床下部の結節乳頭隔を観察したところ、ChR2と同時に発現させているEYFPの蛍光が見られた。YFP陽性細胞でホールセルパッチクランプ記録を行い、青色LEDで光刺激を行ったところ、静止膜電位の上昇が見られ、活動電位が発生した。この結果、HDC-ChR2マウスへの光刺激により、ヒスタミンニューロンを興奮させることが出来ることが示唆された。次に、三叉神経運動ニューロンを含む前頭断スライス標本を作製した。三叉神経運動ニューロンからホールセルパッチクランプ法を用いて静止膜電位を記録し、青色LEDで光刺激を行った。その結果、光の強さ依存性に膜電位の上昇が起こり、活動電位の発生も見られた。これにより、ヒスタミンニューロンの興奮により放出されたヒスタミンが三叉神経運動ニューロンを興奮させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用するトランスジェニックマウスの繁殖が軌道にのるまでに予定していた以上の時間がかかり、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行ったHDC-ChR2マウスのスライス標本を用いた実験を継続し、三叉神経運動ニューロンへのシナプス入力が、ヒスタミンニューロンの興奮によるどのように変化するのかを明らかにする。また、咀嚼運動へのヒスタミンの影響を明らかにするため、覚醒マウスでの光刺激の実験も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験に使用する予定のトランスジェニックマウスが予定通りに繁殖せず、実験が遅れたため、予定通りの使用が行えなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降は、今年度行ったスライス標本を用いた実験を継続するために、薬剤や電極等の消耗品の購入に使用する。また、覚醒動物での光刺激を行うために、覚醒動物用光刺激システムや、動物のアイソレートボックスなどの購入に使用する。
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