ヒスタミンニューロンは摂食時に活性化し、視床下部でのヒスタミンの放出量を増やすことにより摂食抑制が起こると考えられている。本研究では、ヒスタミンの摂食行動の調節に、口腔の感覚や運動がどのように関与するのかを明らかにすることを目的に、①カルシウムセンサーGCaMP6sをヒスタミンニューロン特異的に発現させたマウスおよびラットを用いて除皮質灌流標本を作製し、下歯槽神経もしくは咬筋神経の刺激によるヒスタミンニューロンの活動変化を調べる、②ヒスタミンニューロンに光感受性タンパクであるチャネルロドプシンを発現させたマウスを用いて、光刺激によりヒスタミンニューロンを活性化させ、咀嚼運動への影響を調べる実験を行った。①の実験では、HDC-Creマウスの結節乳頭核にアデノ随伴ウィルスベクターを微量注入することで、ヒスタミンニューロン特異的にGCaMPを発現させることに成功し、免疫組織学によりその発現を確かめることが出来た。この標本を用いて、除皮質灌流標本を作製したところ、GCaMPによる蛍光を確認出来たが、マウスでの灌流標本の維持が難しく、刺激に対する応答を記録するには至らなかった。そこで、最終年度には、野生型Wistarラットの結節乳頭核のニューロンにGCaMPを発現させて灌流標本を作製した。このラットにおいてもGCaMPの蛍光を確認出来た。この2つの実験系の確立により、脳幹のニューロン活動へのアプローチが容易となった。②の実験では、ヒスタミンニューロンにチャネルロドプシンを発現させ、光刺激により神経活動が起こることを確認出来た。最終年度には、このマウスに脳内カニューレを挿入し、自由行動下でヒスタミンの光刺激を行ったが、摂食運動に関与する筋の筋電図に変化は見られなかった。このことから、ヒスタミンニューロンの活動の咀嚼運動への関与は限定的である可能性がある。
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