最終年度である平成30年度は、bFGFまたはEGFとコラーゲンゲルを組み合わせてラット顎下腺損傷部位に適用することで、幹細胞や筋上皮細胞の増殖や分化が促進することや、腺房細胞と考えられる細胞の増殖を確認し、唾液腺組織再生を確認した。次に、PHD2ノックアウトマウス(PHD2 flox/flox; Cre-ER)から得られた脂肪由来幹細胞を用い、その分化能の検討と低酸素応答(タモキシフェン投与による低酸素応答ON、低酸素環境下の培養)による増殖能の検討を行った。その結果、分化能、増殖能ともに良好な結果が得られた。以上から、組織再生の足場に脂肪由来幹細胞を組み合わせた組織再生法の検討を行うこととした。 まず、唾液腺の組織欠損部位に脂肪由来幹細胞を応用するための足場の開発の検討を行った。この足場はatelocollagen /gelatin 複合体で、その作製方法と安全性をすでに発表した。また、ラット皮膚創傷モデルにおいて、足場としてのatelocollagen /gelatin 複合体による創傷治癒促進効果の確認ができた。 今後は、創傷治癒促進効果のあるatelocollagen /gelatin 複合体を唾液腺の創傷治癒に応用すること、さらに低酸素応答を惹起させるPHD阻害薬や低酸素応答を活性化させた脂肪由来幹細胞をatelocollagen /gelatin 複合体と組み合わせて、唾液腺創傷治癒に応用できないかどうかを検討する。
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