研究課題/領域番号 |
16K11494
|
研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
|
研究分担者 |
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20264252)
細矢 明宏 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70350824)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 破骨細胞 / 骨吸収 / Wnt5a / Pkn3 |
研究実績の概要 |
我々は、Wnt5a-Ror2シグナルによる破骨細胞の機能制御機構を明らかにする過程で、セリン/スレオニンキナーゼであるprotein kinase N3 (Pkn3)が、破骨細胞の骨吸収に関与するという知見を得た。平成28年度は、Pkn3のin vivoにおける重要性を明らかにするため、Pkn3遺伝子欠損(Pkn3 KO)マウスの骨の解析を行った。また、Pkn3 KOマウスから調製した破骨細胞および骨芽細胞を用いてin vitroでの解析を行った。さらに、Pkn3がどのように破骨細胞の機能を制御するか明らかにするための準備として、蛍光標識したPkn3を発現するためのアデノウイルスを作成した。 Pkn3 KOマウスおよび野生型マウス(WT)の骨量をマイクロCTを用いて解析したところ、Pkn3 KOマウスでWTよりも有意に増加していた。骨形態計測により、Pkn3 KOマウスとWTとの間で破骨細胞の数には差が認められなかったが、骨吸収面および吸収窩の深さはPkn3 KOマウスで有意に低いことが明らかになった。これらのデータから、Pkn3 KOマウスにおける破骨細胞の骨吸収活性の低下が示唆された。石灰化速度、骨芽細胞数のような骨形成に関する値には有意差がなかった。Pkn3 KOマウスから調製した破骨細胞の骨吸収活性はWTの破骨細胞よりも低かった。一方、骨芽細胞の石灰化能は、Pkn3 KOとWTで差を認めなかった。Pkn3が破骨細胞の骨吸収に関与すること、骨芽細胞の骨形成には影響しないことがin vitroでも確かめられた。これは、Pkn3の阻害剤を骨量減少の治療に用いる場合に重要な要素である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として掲げていた、Pkn3 KOマウスの解析および蛍光標識したPkn3を発現させるためのアデノウイルスの作成は遂行することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
蛍光標識したPkn3を用いて、Pkn3と複合体を形成しているタンパク質群の探索を進める。 当初の研究計画では、Ror2シグナルとPkn3との関連性をより詳細に明らかにするため、Ror2; Pkn3ダブルヘテロ欠損マウスを作成し、解析するとしていたが、それよりも、病態時におけるRor2およびPkn3の役割を明らかにする方が重要ではないか、と考え、関節炎モデルおよび閉経後骨粗鬆症モデル(卵巣摘出モデル)を用いた解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞を用いた実験が、予定よりも順調に進行したため、培養に関わる消耗品(ディスポーザブルピペット)の使用量が少なくて済んだため。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初研究計画よりも、動物を用いた実験を増加させるため、麻酔や骨の標識に使用する注射器の消費量が増加するので、その購入に充てる予定である。
|