研究実績の概要 |
同一患者由来の転移能の異なるヒト口腔扁平上皮癌細胞株2種(非転移株SQUU-A/高転移株SQUU-B)を用いた実験から、転移能を規定する成分がSQUU-B細胞培養上清由来エクソソーム中に存在すること、また、その転移能はエクソソームを介して非転移株SQUU-Aに移行することを報告した。このことは、単一癌巣内のそれぞれの癌細胞が各々の個性をもつエクソソームを分泌しており、それらを介した複雑な細胞間クロストークによって癌微小環境が規定され、この複雑な環境が予後を規定していることを示唆していた。これらの内容については、J Oral Biosci 誌 (Kawakubo-Yasukochi et al., 58: 33-38, 2016; Morioka et al., 58: 180-184, 2016) にて報告した。また、各種国内学会、国際学会で発表し、高い評価を受けた。
加えて、平成28年度におけるその後の解析から、エクソソーム中の当該浸潤・転移規定因子がmiRNAであることが判明し、網羅的miRNA-mRNA統合解析を実施した結果、その標的候補miRNAを23個 (既知のmiRNA 4個 + 未知のmiRNA 19個) に絞ることができた。また、上記23種のmiRNAのうち、どのmiRNAがヒト口腔扁平上皮癌の浸潤・転移能を規定しているのかを検討したところ、浸潤・転移を規定する数種のmiRNAの同定まで行うことができた。
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