研究課題
本研究ではWntシグナル関連遺伝子Arl4cの扁平上皮癌をはじめとする口腔癌の腫瘍形成における役割とWntシグナルを標的とした口腔癌の新規分子標的治療法の確立を目的としている。平成30年度は以下の研究結果を得た。①歯原性腫瘍病理標本において歯原性上皮細胞特異的に約80%の高頻度でArl4cが高発現していた。またその細胞株において、Arl4cの発現がMEK/MAPKシグナルに依存しておりβ-カテニンには依存していなかった。また、その発現はこの細胞株の運動能を制御することを見出した。そこで、この細胞株においてCRISPR/Cas9法を用いてArl4cをノックアウトしたところ、タンパクレベルで発現が消失し、増殖能は抑制された。②免疫組織学的に、β-cateninがヒト歯牙腫症例において歯原性上皮細胞の核および細胞質に高頻度に発現しており、Wntシグナルの活性化が示唆された。また、正常歯原性上皮細胞において、Wntシグナルの活性化によってその増殖能が抑制された。そこで、マイクロアレイ法を用いて、歯原性上皮細胞におけるWntの活性化により発現が抑制される因子として軸索伸張制御因子(Sema3A)を同定した。歯原性上皮細胞においてWntシグナル依存的にSema3AのmRNAおよびタンパク発現が抑制された。また、Sema3Aの発現が歯原性上皮細胞の増殖に必要であることを見出した。一方、歯胚器官培養法におけるWntシグナルの活性化による歯胚上皮細胞の増殖抑制はSema3A刺激により回復された。さらに歯胚上皮培養法を確立し、Wntシグナルの活性化によってbudding形成が促進することを見出した。これらの結果から、歯原性上皮においてWntシグナル依存的なSema3Aの発現を介する増殖の制御が歯牙腫の発生に関与している可能性が示唆された。
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http://www.opath.dent.kyushu-u.ac.jp