研究課題/領域番号 |
16K11503
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
兼松 隆 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (10264053)
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研究分担者 |
浅野 智志 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (30570535)
山脇 洋輔 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (90584061)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞運動 / 癌細胞浸潤 / 癌転移 / 細胞増殖 / 細胞周期 / リン脂質代謝 / イノシトールリン脂質結合性タンパク質 |
研究実績の概要 |
細胞運動は生命活動の根幹をなしがん細胞の浸潤・転移、皮膚の創傷治癒、免疫担当細胞の移動などに必須である。さて、細胞運動は、細胞膜と細胞骨格系の連動によって時空間的に制御されており、その制御には細胞膜のリン脂質代謝が深く関与している。我々は、イノシトールリン脂質結合性タンパク質PRIPが、リン脂質代謝系を制御して細胞運動を調節する可能性を見出した。本研究では、膜リン脂質代謝の制御機構を解析して、PRIPが仲介する細胞運動の調節機構を明らかにする。本研究から、細胞運動の新たな分子機構を明らかにできれば、その破綻で生じるがん病態の新たな理解に繋がり、新たな創薬標的の提案と新たな創薬研究へと繋がると期待する。初年度においてPrip1とPrip2欠損マウス(Prip-KO)胎児線維芽細胞(MEF)と野生型MEFの細胞運動能を比較検討を行い細胞運動能に違いがあり、これが細胞膜の脂質代謝の違いに起因することを明らかにした。 今年度においては、肺癌細胞を含めたいくつかの細胞株を用いて前述の分子機構としてPI3Kによって進行するPI(4,5)P2→PI(3,4,5)P3代謝をPRIP分子が制御することを明らかにした。また、癌細胞においてPRIPを介したこうした制御によって癌細胞浸潤(転移)が抑制されることを明らかにした。さらに、浸潤(転移)能のみならず細胞増殖能においてもPRIP分子が、PI3K-AKT-GSK3β系を介した細胞周期・細胞増殖を制御するといういくつかの知見を得ている。細胞浸潤のみならずPRIPが仲介する増殖抑制機構という新しい分子メカニズムの解明研究にも研究を展開させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞移動におけるPRIPの役割解明研究に加えて、その研究推進過程で見出した細胞増殖過程におけるPRIP分子による制御機構について新しい知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞移動と細胞増殖過程において、PRIPがどの様にこれらを調節しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験費・消耗品費の一部を教室研究費で支払ったために生じた。翌年度に繰り越しして動物実験費や国際学会における発表費として使用する計画である。
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