前年度までに、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1に SNAP-P. gingivalisを感染させるとPKR蛋白質のリン酸化や発現が亢進することや、培養上清中にD-glucoseを添加して高血糖状態にするとPKRの誘導・活性化が亢進することが判明している。これらの結果を踏まえ、今年度は以下の解析に取り組んだ。 1. P. gingivalisが骨芽細胞に侵入する様式について:MC3T3-E1の培養上清中にD-glucoseを添加して高血糖状態にして、P. gingivalisを感染させた後に、コロニー形成能を測定した。高血糖状態下においてP. gingivalisの骨芽細胞への侵入率に、有意な変化は見られなかった。また、電子顕微鏡によりP. gingivalis感染時のMC3T3-E1細胞の形態を観察したが、感染による明らかな形態変化は認められなかった。 2. P. gingivalisが破骨細胞に及ぼす影響:骨芽細胞との共培養系に先立ち、破骨前駆細胞であるRAW264.7 細胞にP. gingivalisを感染させ、破骨細胞へ分化状態を顕微鏡下で観察した。P. gingivalis感染による破骨細胞分化への影響は認められなかった。 3. P. gingivalisによるPKR誘導・活性のin vivo解析:歯周病マウス及び糖尿病モデルマウスを作製し、下顎骨を摘出して凍結切片を作製した。PKRおよびリン酸化PKR に対する抗体を用いて免疫組織染色を行ったが、良好な反応が見られなかった。
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