研究課題/領域番号 |
16K11508
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
吉田 みどり 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (30243728)
|
研究分担者 |
前田 直樹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (10219272)
誉田 栄一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (30192321)
細木 秀彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (60199502)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | イメージングプレート / 放射性セシウム / セシウム137 / セシウム134 |
研究実績の概要 |
福島原子力発電所事故から5年が経過し、以前ほど放射性セシウム(Cs)による環境汚染は騒がれなくなった。しかし原子力発電所の再稼働は、2基だけが可能となり、他の46基の原発は認可されていない。福島の状況は溶融核燃料の処理法が確立されていなく、先が見えない状態である。今後の原子力発電所の再稼働の要件として、事故対策処理法が掲げられているが、一般庶民が直接関与できるものがない。自然環境中の放射性Cs量は、事故直後に比べると半分程度に減少しているにすぎない。また、初期ではCs134とCs137の比は約1:1であったが、半減期はそれぞれ約2年と30年と大きく異なり、また崩壊形式も異なり、放出されるエネルギースペクトルが異なる。これらのことを考慮する必要もある。過去の研究でイメージングプレートによる検出が行われていたが、その結果が現在の状況にあてはまるかは前述のことから不明である。イメージングプレートはエネルギー依存性が高く特に臨床で多く用いられているエネルギー範囲に感度がたかくなるように作られている。Cs134、Cs137から放出される放射線のエネルギーはそれと比べるとはるかに高い。これらのことを考慮した研究が必要である。 本研究では、多くの一般歯科診療所に設置されている歯科用イメージングプレートシステム(IP)を用いて、放射性Csに対する感度を上昇させる測定法を確立し、日本中至る所で食品中の放射能量を簡単に測定できるネットワークの拠点となるよう、歯科界として、現在の原子力の事故処理対策に貢献を果たすことを目的とする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の計画に従った計画まで達成している。平成24年3月に、関西広域連合は震災がれきの放射性Cs濃度を100 Bq/kg以下、焼却灰の埋め立て基準2000 Bq/kg以下とする統一基準を定めた。これらの基準値を考慮して、50、100、500、1000、2000、4000、8000 Bq/kgの7種類の放射能濃度を有する土の試料を作製を目指した。最初に実験室内で計測できるシステムの確立を行った。このシステムではサンプルは標準容器内に封入し測定するが、その容量は100mlである。現在保有している福島の土を20g入れ、放射能量を測定した。放射能量はCs134、Cs137、K40がそれぞれ独立で計測できることを確認した。6個のサンプルでのばらつきは重量では19.49~19.90とほとんど同じであるとき、放射能量のばらつきは1987~2111Bqとほぼ均一であることが確認できた。またCs134とCs137の放射能量の比(Cs137/Cs134)は6.34~6.58ととほぼ均一であることが確認できた。この6個のサンプル結果から保有の土を基準として種々の濃度の試料を作製できることが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ベータ線とガンマ線のイメージングプレート(IP)への影響の違いの検討を行う。Cs137とCs134から放出されるβ線を遮断したものと遮断しないものの2種類の比較により検討を行う。R[g/cm2]=0.542Eー0.133 (E>0.8MeV)(Eはベータ線の最大エネルギー値)、R[g/cm2]=0.407E1.38 (0.15MeV<E<0.8MeV)この2式から、β線の最大飛程から物質と厚さを決定し、質量減弱曲線からγ線の透過度を求め、条件を変えることにより連立方程式をたて、解を求める。物質の種類と厚さを変えることで実際のベータ線とガンマ線の割合を推定する。 2.ベータ線の制動放射によるX線のエネルギーがIPのエネルギー吸収効率が最も高いエネルギーと一致するような物質を用い、厚さをかえることによってIPの感度を調べる。 3.最終的にはベータ線の制動放射によるX線とガンマ線のk吸収端によるk特性X線を利用できる物質の種類と厚さを決定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
英文雑誌に論文を投稿しており、雑誌に受理されるのが遅かったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
論文が受理され、今年度中に投稿料を支払う予定である。
|