研究課題
ミトコンドリアDNA (mtDNA) を欠失したρ0細胞における遺伝子発現について、親株である143B (Osteosarcoma 由来細胞株) と比較検討した。親株とρ0細胞をピルビン酸及びウリジン存在下の培地にて培養し、十分育ったところで細胞を回収した。まず、DNAを市販のキットを用いて抽出し、mtDNAが欠失しているかを確認した。その結果、ρ0細胞においてはmtDNAは検出限界以下であった。次に、回収した細胞をISOGEN処理しRNAを抽出した。予備的なDNAアレイ実験で発現変化が認められた遺伝子群のプライマーを用いてSYBR Greenを用いた定量PCRを行ったところ、ミトコンドリア関連遺伝子のみならず、分子シャペロンや抗酸化酵素群の遺伝子発現が変化していることが明らかとなった。ミトコンドリア関連遺伝子については、ミトコンドリアに局在し、活性酸素を消去する酵素であるMnSOD、ミトコンドリア膜の物質輸送に関わるTOM22の遺伝子発現が亢進していた。分子シャペロンにおいては、HSP90a, HSP72, HSP70等の発現が有意に亢進しいた。さらに、DNA修復酵素であるKu86の遺伝子発現も亢進していた。ρ0細胞におけるこれらの遺伝子発現の亢進は、細胞内で活性酸素量が上昇し、それにより細胞内構成要素が親株に比べてよりダメージを受け、そのダメージを修復させようとしているのではないかと考察された。また、アポトーシスに関与する遺伝子であるチトクロムCやFas 等の遺伝子発現も亢進していることも明らかとなった。また、MnSODおよび、CuZnSODの過剰発現用コンストラクトを作成し、シークエンスにてベクター内に目的遺伝子が挿入されていることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りρ0細胞における遺伝子発現変化について定量PCRにて親株と違いがある複数の遺伝子を明らかにできたため。
mtDNA欠失細胞における遺伝子発現変化を検出することができたので、今後は、mtDNAの一部を欠失している細胞における遺伝子発現変化を調べる予定である。また、ρ0細胞については、新たに2系統のρ0細胞を入手したので、これらの細胞における遺伝子発現変化についても検討する。さらに、作成したコンストラクトを細胞に導入することにより遺伝子発現がどのように変化するのかについても検討を行う。その際の解糖系及び、電子伝達系の活性、ATP量も調べる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件)
東北医科薬科大学研究誌
巻: 印刷中 ページ: -
JAMA Neurology
巻: 73 ページ: 990-993
10.1001/jamaneurol.2016.0886
Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 8 ページ: 389-394
10.1016/j.bbrep.2016.10.013
Scientific Reports
巻: 6 ページ: -
10.1038/srep39015