研究課題
我々は、これまで行ってきた研究の中で口腔乾燥感と同時に摂食・嚥下障害を訴える患者にも多く遭遇し、簡便で安全な嚥下機能評価の必要性を痛感してきた。また、近年は、口腔ケア、周術期の口腔機能管理などの観点からも摂食・嚥下障害に対する診断や治療、対応法に関しても注目されている。そこで、今回の研究では、MRI により安全かつ簡便で嚥下機能を評価出来るような手法を確立することを目的として行った。同時に、これまでとは異なった観点からの嚥下機能障害の診断基準やその治療・対応法の選択基準を確立することを目的として行った。本研究では、まず、健常者ボランティアにMRIのT2強調画像(T2WI)の超高速撮像を応用することで、嚥下機能の評価するための撮像法の開発を行った。撮像領域は口腔、咽頭、喉頭、気道、食道領域が十分に含まれ、嚥下機能評価が可能な裁断面とした。他の領域も含めて、病変の存在が確認される、もしくは予想される場合はそれも含めることとした。このMRIの撮像法により、ごく少量の生理食塩水を嚥下してもらうことで、口腔から咽頭、食道へと水が移動していく状態を描出できることを確認した。また、この画像上では、口腔、咽頭、喉頭、気道、食道領域の嚥下時の状態の詳細な評価も可能であることが確認出来た。我々の開発したT2WIを用いた超高速MR撮像法では、非侵襲的で安全かつ容易に嚥下機能を評価出来る可能性があると考えた。現在は、口腔領域の疾患によりMRI撮像を行った患者の一部に対しても、我々の開発した撮像法を応用し、このデータより嚥下機能障害の診断基準やその治療・対応法の選択基準の確立を試みている。これらの結果については、国内外の学会や専門誌を通して発表していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
概ね順調に進行しているが、最終的な結果を得るには至っていない。理由としては本研究は臨床研究で、対象となる症例も限定しているため、症例数を増やすには一定期間は必要と考える。
今後は、更に症例数を増やしていくことで、これまで蓄積してきたデータをより正確なものにしていく予定である。それに加えて摂食嚥下障害の患者に対する、様々な臨床所見や従来の検査結果、治療法とCine MRIの所見についての関連性についても検討を行い、摂食嚥下機能障害の病態解明、治療法の確立を更に押し進めていく予定である。
論文投稿における英文校正費、投稿費用などを予定していたが処理が遅くなったため
次度で使用予定である
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Med Oral Patol Oral Cir Bucal
巻: 21 ページ: e341-e348
歯放
巻: 56 ページ: 8-16