研究課題
内視鏡を利用して唾石を摘出する国内外の他施設の方法は唾液腺管に内視鏡を挿入するために切開が必要であった。そこで唾液腺管を切開することなく非観血的に挿入でき、世界的に最も低侵襲の唾液腺内視鏡下唾石摘出術の開発研究を行ってきた。その結果、世界最小の微細径内視鏡を開発し、体内電気水圧破壊装置を応用して一切の外科侵襲を加えることなく顎下腺唾石の破壊摘出に成功した。ホルミウム・ヤグレーザーによる唾石破壊術も研究したが、唾石を細粉化すると発熱による低温火傷の可能性があった。そこで、唾石破砕法とbasket鉗子で把持摘出する方法の併用療法を考案し、必要な発熱量は大幅に低減した。しかし、唾石を細片化するにはやはり大きな発熱量を要することが判明した。この破砕法の発熱による障害を避け、この破砕法と把持法の併用療法をさらに低侵襲化する有効な手段として、唾石溶解療法を開発すればさらに低侵襲化が可能になると考え、唾石溶解剤として食品にも添加されているクエン酸を採用した。この溶解液を使用し、すでにホルミウム・ヤグレーザーによって細片化した唾石を用いて一、唾石溶解実験を行った。それにより打席溶解効果を確認したところ、この方法で唾石が溶解されることが明らかになった。しかし、研究材料に用いた唾石は乾燥状態の試料であり、生体内では、唾石表面が食物残渣や細菌塊(biofilm)で覆われており、生体内でカルシウム溶解剤を有効に作用させるには、さらに表面を覆うタンパク質を除去する必要があった。そこで、今後は唾液腺内視鏡下での唾石破砕・溶解療法の実用化に向けた、たんぱく質・カルシウム二重溶解併用療法の有効性を検討する必要があるとの結論に至った。
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