研究課題/領域番号 |
16K11518
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
天野 滋 明海大学, 歯学部, 准教授 (90167958)
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研究分担者 |
関根 圭輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00323569)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / CD13 / Fibronectin / NGR配列 |
研究実績の概要 |
私共は、Fibronectin(Fn) N末端30kDa(Fn30kDa)部分が、破骨細胞前駆細胞上のCD13に結合し破骨細胞分化を促進させること、CD13が破骨細胞の分化とともに核周囲、波状縁へと移動していく知見を得た。そこで、破骨細胞分化におけるFn30kDa/CD13シグナル役割を明らかにすることを目的としている。Fn30kDaのCD13結合部位を特定し、アミノ酸22個のペプチドを合成した。このペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体をラットリンパ節法で作製した。このモノクローナル抗体を用いて、OVXマウスまたはLPS刺激による骨吸収実験マウス末血中にこのモノクローナル抗体が認識するペプチドが存在するか否かをELISAで調べたところ、明らかにOVXマウスとLPS刺激マウスの血液中で高値を示した。今後、作製できたモノクローナル抗体がFn30kDaのCD13への結合を阻止できる中和抗体であるか否か検討し、Porphyromonas gingivalis (Pg)感染実験マウスにおける歯槽骨吸収を抑制できるか否か検討する予定である。このペプチドがCD13結合にして核内周囲に移動することから、このペプチドが細胞内さらに核内に運び込むデリバリー作用を有するペプチドである可能性が出てきた。そこで、このペプチドに破骨細胞分化抑制に関与する抗酸化物質を結合させた複合体を作製し、Pg感染実験マウスにおける歯槽骨吸収を抑制できるか否か検討しようと考えた。しかし、抗酸化物質をペプチドに結合させる方法が発見できなかった。そこで、このペプチドのデリバリー機能を確かめるために、クリックケミストリーでDoxorubicin(抗がん剤)-ペプチド複合体を合成し、CD13高発現癌細胞HT1080に対するこのペプチドの抗ガン剤デリバリー作用をin vitroとin vivo系で現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FFn30kDaのCD13結合部位を特異的に認識するモノクローナル抗体作製は、ラットリンパ節法を用い、腸骨リンパ組織細胞とミエローマ細胞SP2/0細胞をPEGで融合させ、スクリーニング、クローニングでモノクローナル抗体を得ることができた。OVXマウスとLPS刺激による骨吸収実験マウス血中でFibronectin (Fn)N末端断片が高値に存在することが、このモノクローナル抗体を用いることによって明らかとなった。つまり、この抗体は、破骨細胞形成促進因子となるFnN末端を検出できる抗体であり、骨吸収促進にFnN末端断片が関与している可能性が示唆された。今後、作製できたモノクローナル抗体がFn30kDaのCD13への結合を阻止できる中和抗体であるか否か、さらにPorphyromonas gingivalis 感染実験マウスにおける歯槽骨吸収を抑制できるか否か検討するため、無血清培地による大量生産・精製を行っている。 このペプチドがCD13結合にして核内周囲に移動することから、このペプチドが細胞内さらに核内に運び込むデリバリー作用を有するペプチドである可能性が示された。そこで、このデリバリー機能を確かめるため、クリックケミストリーでDoxorubicin(抗がん剤) -ペプチド複合体を作製しCD13高発現癌細胞HT1080に対する抗ガン剤デリバリー機能をin vitroとin vivo系で検討中である。このペプチドのデリバリー作用が確かめられた後、破骨細胞形成抑制作用がある抗酸化物質のペプチドへの結合を検討する予定である。モノクローナル抗体作製とDoxorubicin-ペプチド複合体合成に時間がかかってしまったが、今年度は、破骨細胞前駆細胞4B12細胞のCD13遺伝子ノックアウト細胞作製に取り掛かりたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞前駆細胞上のCD13は、分化前では細胞膜上に、TRAP陽性多核細胞では核周囲に、そして骨吸収を行っている成熟破骨細胞ではruffled borderにその局在を認めた。そこで、CD13遺伝子ノックアウト細胞を作製し、破骨細胞分化段階におけるCD13の役割を検討する。Fn分解産物N末端30kDa刺激によってRANK、TRAF6、NFATc1、c-Fos遺伝子発現が上昇する結果を得ている。CD13は、細胞内ドメインが短いことから細胞外ドメインのペプチダーゼ活性が主な役割で、シグナル伝達には関与していないと考えられていた。しかし、最近、単球膜上のCD13を抗体で架橋すると、細胞内Ca++の上昇が起きERK1/2、JNKそしてp38のリン化を上昇させサイトカイン分泌を誘導すること、また一方でSrc依存的にCD13細胞内ドメインのtyrosineがリン酸化されSrc、FAKそしてERKをリン酸化することが報告された。これらのシグナルに関与している分子は、RANK、TRAF6、NFATc1、c-Fos遺伝子発現に関与していることがすでに証明されているので、Fn分解産物N末端30kDa刺激がCD13の架橋を誘導して、Src、FAK、ERK1/2、JNK、p38のリン酸化、RANK、TRAF6、NFATc1、c-Fos遺伝子発現へと結びついているか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年度、CD13遺伝子ノックアウト細胞作製までに至らなかった。CD13遺伝子ノックアウト細胞作製には、gRNAの設計・合成が必要である。gRNA作製費用として次年度使用額が生じた。 (使用計画)CD13遺伝子ノックアウト細胞作製に用いるgRNA合成に使用する予定である。
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