Voxel-Based morphometry(以下VBM)はAshuburnerらにより脳形態変化を調べる方法として開発された。VBMは脳形態において近年注目されている方法であり、 3D-MRIを応用し各個人の脳画像を標準脳座標上に変換、空間正規化することで全脳の形態的解析ができる。前年度に4例症例が集積追加され、合計22例(平均年齢63.3歳、男性3例女性19例)に対しVBMを行った。116か所のROIにおいて統計学的に分析したところ、標準偏差で平均で2.0以上委縮している箇所はなかった。しかしながらRt-Brodmann area34において1.62、左側の視床において1.76と高い委縮傾向を示し、それぞれ22例中8例は2.0以上の委縮を認めた。 Brodmann area34は扁桃体の皮質内側核群に相当する。顎顔面領域の主な痛覚情報は三叉神経節を経由し橋に入り、延髄へ入力される.延髄では三叉神経脊髄路核の特に尾側亜核と呼ばれる神経核と第一・第二頸髄の後角表層に痛覚情報が入力されている。この部位で一次ニューロンから二次ニューロンに情報伝達されるが、二次ニューロンは脊髄視床路に軸索を伸ばし毛帯交叉で反対側の前索をさらに上行し視床髄板内側核群などに投射しているもの(内側系:medial system)と、毛帯交叉で反対側の外側端を上行し視床後内腹側核群に投射しているもの(外側系:lateral system)の二系統の経路が存在するといわれている。このことを考慮すると歯科心身症における痛みが、脳委縮に関連する可能性が示唆された。この2領域においては心理テストおよびVASによる疼痛スコアと明らかな相関はみられなかった。今後、さらなる症例の集積を行い再検討する予定である。
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