研究課題/領域番号 |
16K11540
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
真柳 弦 東北大学, 歯学研究科, 助教 (10451600)
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研究分担者 |
鷲尾 純平 東北大学, 歯学研究科, 講師 (20400260)
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
佐藤 拓一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10303132)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細菌 / pH / カルシウム / エナメル質齲蝕 / 根面齲蝕 / インターフェイス / 蛍光イメージング / 脱灰 |
研究実績の概要 |
歯垢中の細菌が糖代謝によって産生した酸が歯の表面を脱灰することにより、齲蝕が生じる。従って、歯質-バイオフィルムインターフェイスにおいて、脱灰の原因となる酸と脱灰の結果として歯質成分であるハイドロキシアパタイトから溶出するカルシウム量を同時にモニタリングすることは、歯の脱灰の様相を解明するために必要である。本研究では、pHおよびカルシウム蛍光試薬を用いて、歯面上のバイオフィルム内部のpHおよびカルシウムの変化を経時的にイメージングする齲蝕モデル系を構築することを目的としている。今年度は、齲蝕関連細菌として代表的なStreptococcus mutansによる人工バイオフィルムを用いて、糖代謝中のバイオフィルム内のpH分布をpH感受性蛍光試薬(C-SNARF-4)により可視化することを試みたが、バイオフィルム内のpH分布を精度良くモニターすることが現時点では困難であることが分かった。また、齲蝕予防および治療材料の細菌に対する酸産生抑制効果や歯質の脱灰抑制効果を比較検討することは、材料の評価を行うために重要である。そこで、フッ化物塗布後の歯面(歯冠エナメル質、根面象牙質)のpH低下抑制およびカルシウム溶出量を検討したところ、特にフッ化ジアンミン銀塗布歯面において、細菌の糖代謝により産生される乳酸量の減少、pH低下抑制および溶出カルシウム量の減少が認められた。さらに、既存及び新規の修復材料を用いて材料-バイオフィルムインターフェイスの糖代謝・酸産生に及ぼす影響について検討したところ、フッ素徐放性修復材料はインターフェイスのpH低下を抑制することが明らかとなった。今後は、pH、カルシウム、フッ素の動態を同時にモニタリングし、齲蝕の予防・治療に効果のある材料・食品・薬剤等の評価への応用も考慮した齲蝕モデル系を構築していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、細菌の糖代謝中のバイオフィルム内のpH蛍光イメージング法の確立を行う予定であったが、pH蛍光試薬を用いて、バイオフィルム内のpH分布を精度良くモニターすることが困難であることが分かった。従って、次年度に行う予定であった齲蝕予防および治療材料のpH低下抑制効果と脱灰抑制効果の比較検討を、微小pH電極およびカルシウム結合蛍光試薬を用いて行った。そのため当初の計画より変更を生じたのでこの区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
歯質-バイオフィルムインターフェイスでpH、カルシウム、フッ素の動態を同時にモニタリングする齲蝕モデル系を構築していく予定である。このモデル系を用いて、歯冠エナメル質と根面象牙質の脱灰のメカニズムの詳細解明や、齲蝕の予防・治療に効果のある材料・食品・薬剤等の評価への応用を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度に予定していたpH蛍光イメージング法の確立に使用する分と、次年度に行う予定であった齲蝕予防および治療材料のpH低下抑制効果と脱灰抑制効果の比較検討に関する実験を入れ替えて実施したため生じたものである。
(使用計画)平成30年度請求額とあわせて、歯質バイオフィルムインターフェイスでpH、カルシウム、フッ素の動態を同時にモニタリングする齲蝕モデル系の構築に必要な経費として使用する予定である。さらに、最終年度である次年度は、成果報告のための学会発表の旅費、学術誌への投稿費用等も予定している。
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