研究課題
歯垢中の細菌が糖代謝によって産生した酸が歯の表面を脱灰することにより、う蝕が生じる。従って、歯質-バイオフィルムインターフェイスにおいて、脱灰の原因となる酸と脱灰の結果として歯質成分であるハイドロキシアパタイトから溶出するカルシウム量を同時にモニタリングすることは、歯の脱灰の様相を解明するために必要である。さらに、う蝕の予防・治療に効果のある材料・食品・薬剤等を評価するには、歯面にフッ化物を塗布後あるいはフッ素徐放性のセメントやレジンなどの歯科修復材料の水素イオン、カルシウムイオン、フッ化物イオンなどの動態を経時的に観察し、各材料のpH低下抑制、脱灰抑制機能について検討する必要がある。今年度は、フッ素徐放性のセメントやレジンなどの歯科修復材料のpH低下抑制能を評価した。イオン感受性電界効果型トランジスタ微小pH電極を用いて、細菌-材料インターフェイスpH測定装置を作製し、フッ素徐放性歯科修復材料が細菌の糖代謝・酸産生に及ぼす影響について検討したところ、グラスアイオノマーセメント、フロアブルコンポジットレジン等のグルコース添加90分後のpHはアクリル板(コントロール)のpHと比べて高い値を示した。このことから、フッ素徐放性修復材料はインターフェイスのpH低下を有意に抑制することが明らかとなった。また、pH測定後に回収した細菌中のフッ素量を、フッ素電極を用いて測定した結果、菌中から検出されたフッ素量が多いほど、材料によるpH低下抑制が大きくなったことから、pH低下の抑制効果は材料から放出されたフッ素によるものと考えられた。
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Journal of Prosthodontic Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.jpor.2019.09.002.
Biomedical Research
巻: 40 ページ: 163-168
10.2220/biomedres.40.163.