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2017 年度 実施状況報告書

歯硬組織織の退行性変化の病態解明ならびに光学的診断の開発と臨床導入

研究課題

研究課題/領域番号 16K11544
研究機関岡山大学

研究代表者

島田 康史  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (60282761)

研究分担者 北迫 勇一  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (30361702)
高橋 礼奈  東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (40613609)
田上 順次  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50171567)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード光干渉断層計 / コンポジットレジン / エナメル質 / 亀裂
研究実績の概要

コンポジットレジンは重合収縮するため、接着界面にギャップまたは接着修復窩縁部にエナメル質亀裂が生じることがある。臨床にてコンポジットレジン修復の窩縁にエナメル質亀裂が生じると、修復物辺縁部はやや白く見え、窩洞表面エナメル質の微小亀裂は術後疼痛ならびに二次齲蝕を生じる可能性がある。波長走査型光干渉断層計 (SS-OCT) は、生体に無害な近赤外光と光学干渉計の応用により、被写体内部から得られた後方散乱光を解析することで、非破壊、非侵襲的に組織の精密断層像を得ることができる。本研究はSS-OCTを用い、コンポジットレジン修復の窩縁におけるエナメル質亀裂を観察し、窩洞の位置と選択的リン酸エッチングの影響を評価した。37℃水中にて7日間保存した後、SS-OCTを用いて試料の3D画像構築を行い、得られた画像から窩洞の断層画像を抽出して観察を行い、窩縁の円周に沿ったエナメル質亀裂の有無と拡がりについて5段階(0:亀裂なし、1:窩縁の1/4までの亀裂、2:窩縁の1/4-1/2の亀裂、3:窩縁の1/2-3/4の亀裂、4:窩縁の3/4以上の亀裂)に分類し評価した。
結果、SS-OCTを用いることによりコンポジットレジン修復窩縁のエナメル質亀裂を検出することができた。SS-エナメル質亀裂はSS-OCT画像にて信号強度の増加した明るい線として明確に識別することができた。歯頚部の窩洞では歯冠中央部よりも有意にエナメル質亀裂が生じていた。また選択的リン酸エッチングをエナメル質に行うと、エナメル質亀裂は有意に増加していた。
SS-OCT画像において白線として観察したエナメル質亀裂の部位を半切し、走査型レーザー顕微鏡で観察すると、SS-OCT画像と一致して亀裂の存在が確認された。エナメル質亀裂は、主に窩縁に隣接して始まり、エナメル象牙境に向かって延び、時には接着界面にまで達していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度はエナメル質歯冠亀裂を光干渉断層計の3D画像で評価し、高齢者にみられるエナメル質亀裂のパターンについて発症機序を考察することができた。平成29年度において、コンポジットレジン修復窩縁のエナメル質亀裂を検出することができた。コンポジットレジン修復窩縁部に生じるエナメル質の微小亀裂および辺縁漏洩は、二次齲蝕や歯髄刺激を引き起こすことがある。辺縁漏洩は修復材料のエナメル質に対する接着性に依存するが、優れた接着性能を有する現在の接着材を用いてもエナメル質に亀裂が生じることがあり、窩縁エナメル質亀裂の防止は接着歯学における課題となっている。本研究から、歯頚部領域は歯冠中央部よりもエナメル質の亀裂を生じやすい傾向がみられた。歯頚部領域においてエナメル質亀裂の頻度が高いのは、リン酸エッチング後のエナメル質の脆弱化によるものと推察される。亀裂の発生状況は窩洞形成の位置と窩壁面の接着処理によって異なっており、したがってコンポジットレジン修復においてエナメル質窩縁を保護するためには接着処理方法の改良が望まれ、さらなる研究が必要と思われた。

今後の研究の推進方策

亀裂は位置と深さによって症状に変化がみられ、エナメル質表層に限局する亀裂は、臨床的には無症状であることが多い。しかしながら放置すると亀裂は象牙質へと侵入し、強い臨床症状が出現し、破折によって抜歯に至ることもある。したがって、亀裂の診断を正確に行い、疾患の抑制を検討する必要がある。
歯頚部の非齲蝕性の実質欠損(Non-Carious Cervical Lesion、NCCL) は比較的多くみられる疾患であり、その発生率は加齢的に増加する。一般にNCCLは無症状だが、小さな欠損でも象牙質知覚過敏を伴うこともあり、食渣残留や齲蝕を誘発し、また欠損が大きくなると歯牙破折や歯髄損傷の原因となる。
歯の咬耗は有歯列の高齢者に多くみられ、食生活習慣や歯軋りによって若年者にも生じることがある。放置すると露髄による歯髄疾患や破折、また不正咬合の原因となる。
光干渉断層計(OCT)は生体組織を透過する近赤外線の後方散乱光を利用した光干渉計の原理に基づいて、非侵襲的に組織内部の断層画像を構築する医療技術であり、波長掃引型OCT(SS-OCT)は画像深度に優れ、歯の内部の変化を観察するのに有利である。SS-OCTの特徴として、空間分解能が約10-15μmという高い解像度を具備し、歯科用X線写真やCTよりも解像度が高いことが挙げられる。今後もSS-OCTを駆使し、これらの疾患の観察と診断を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究を行い論文掲載までの手続きに日数を要し、掲載料などの支払いが次年度に繰り越しとなった。また、次年度に行う研究プロジェクトに備え、研究費を用意しておく必要があった。2018年度の研究ならびに成果発表においてすべて使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] University of Washington(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Washington
  • [雑誌論文] Assessment of enamel cracks at adhesive cavosurface margin using three-dimensional swept-source optical coherence tomography2017

    • 著者名/発表者名
      Tabata T, Shimada Y, Sadr A, Tagami J, Sumi Y
    • 雑誌名

      Journal of Dentistry

      巻: 61 ページ: 28-32

    • DOI

      10.1016/j.jdent.2017.04.005.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 3D imaging of dental caries using swept-source optical coherence tomography2017

    • 著者名/発表者名
      Shimada Y, Sadr A, Sumi Y, Tagami J, Yoshiyama M
    • 学会等名
      The 19th JSCD/KACD Joint-Scientific Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-21  

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