研究課題/領域番号 |
16K11546
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉羽 永子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10323974)
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研究分担者 |
大倉 直人 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00547573)
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30220718)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | α-smooth muscle actin / myofibroblast / dental pulp tissue |
研究実績の概要 |
創傷治癒時には、細胞骨格タンパクの1つα-smooth muscle actin(α-SMA)を発現する筋線維芽細胞(myofibroblast)と称される細胞が一過性に出現し、その治癒機転に重要な役割をしていることが示唆されている。本研究の目的は、myofibroblastの歯髄組織修復・再生への関与をin vivo, in vitroにおいて解明することにある。 H28年度においては、ラットおよびヒトの歯髄組織創傷治癒過程において、興味ある知見を得ることができている。 1.ラット歯髄組織創傷治癒過程において、myofibroblastはpulp coreから供給され、その後創傷部に移動し、新たな象牙質様被蓋硬組織(dentin bridge)の形成に関与すると考えられた。Pulp coreと呼ばれる歯髄組織の中心部には太い血管があり、歯髄幹細胞の存在する場所としての報告が幾つかなされている。受傷3日後にmyofibroblastは、pulp coreを中心に出現し、その後受傷部に集積した。α-SMAの発現には幹細胞や前駆細胞との関連も示唆されている。今後pulp coreに出現するmyofibroblastと幹細胞や前駆細胞について検討を進める予定である。 2. ヒト歯髄組織創傷治癒過程において、fibrocyteの出現は時間的空間的に制御されその治癒に関与している事を示唆するデータが得られた。Myofibroblastの前駆細胞として、幾つかの種類が列挙されている。そのうちの1つに、骨髄由来のfibrocyteがある。骨髄由来を示すCD45のマーカーと、間葉系細胞であることを示すI型コラーゲンの共陽性を示すこの細胞は近年報告された細胞であり、歯髄組織におけるfibrocytes に関するデータはこれが最初であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. ラット歯髄創傷治癒過程における研究 上記の研究結果は、学術誌に受理されたことから、ここまでの達成度は高いと考えられる。 2. ヒト歯髄創傷治癒過程における研究 Fibrocyteを同定するための抗体の選択と組織片の処理の方法に時間を費やしたが、最終的にはin vivoにおいてきれいに同定することが可能となった。この研究ではこのステップが重要な課題であったため、これをベースに研究を発展させることが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.ラット歯髄創傷治癒過程における研究 Pulp coreに存在する細胞と、myofibroblastの前駆細胞との関連について、in vitroにおいて更に解析を進める。 2.ヒト歯髄創傷治癒過程における研究 ここまでのfibrocyteに関するデータはH29年度中に学術誌への投稿・受理を計画している。 更に他の病態においても解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に関するデータの収集と発表の予定で、フィンランドで開催された国際学会に参加予定で予算を計上していた。しかしながら、都合がつかず不参加となった。さらに論文の校正費、投稿費を計上していたが、来年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度においては、論文作成に関する予算と、in vitroでの実験を進める予定であるため、本差額分を使用する予定である。
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