研究実績の概要 |
本研究の目的は,申請者の研究グループが着目する抗炎症性低分子化合物terreinの炎症性骨吸収疾患(特に歯内・歯周疾患)に対する治療薬としての可能性を 検討することである。 超高齢社会を迎えた我が国において,食生活を司る口腔機能を維持することは健康寿命を延伸する上で必須である。そのためにも,成年から高齢期における歯の 喪失の主な原因となる根尖性歯周炎および歯周病の効率的な治療・予防法を開発することが望まれる。 申請者らは,有機化学的に合成したterreinに抗炎症作用 (炎症性サイトカインinterleukin-6のシグナル伝達抑制)があることを報告した。 本研究では,抗炎症効果が期待できる低分子化合物terreinおよびその新規類縁体の細胞内ターゲットを解明して,歯内・歯周疾患のin vivoモデルにおける抗炎 症効果を検討する。そして,炎症性骨吸収を主病態とする根尖性歯周炎および歯周病の新たな治療法開発に繋がるエビデンスを構築することを目的とする。 本年度の研究成果として,絹糸結紮歯周病マウスモデルにおいて,terreinを腹腔投与すると有意に歯槽骨の吸収を抑制することをエックス線学的評価にて確認した。さらに,組織学的評価において,炎症性細胞の上皮下への浸潤をterreinが抑制することも確認した。 本研究成果は,terreinの抗炎症効果をin vivoにおいて初めて証明したものであり,今後の新規類縁体の効能評価を行う上で,カギとなる研究成果であると考える。
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