研究課題/領域番号 |
16K11551
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 茂樹 広島大学, 病院(歯), 講師 (30549762)
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研究分担者 |
柴 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (60260668)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯髄細胞 |
研究実績の概要 |
歯髄細胞は高い増殖能と潜在的な分化能を持つことから再生医療への応用が期待されているが、歯髄細胞や象牙芽細胞など歯髄組織中に存在する間葉系細胞が特徴的に発現する遺伝子やその翻訳産物が、それら細胞の増殖能に与える影響についてはまだ十分に明らかとなっていない。研究代表者は、これまでの研究結果として、DMP-1を高発現する細胞群においてはDMP-1遺伝子座のアンチセンス鎖にDMP-1と高い発現相関を示すタンパク質をコードしない長鎖非翻訳遺伝子long non-coding RNAが存在することを明らかとしてきた。本年の研究成果として、このlong non-coding RNAおよびDMP-1を高発現する口腔扁平上皮がん細胞株に対してlong non-coding RNAおよびDMP-1の発現をsiRNAで一過性に発現抑制すると、細胞増殖が抑制されることが明らかとなった。また、long non-coding RNAをsiRNAで抑制した後に、alpha-amanitinで処理し、DMP-1 mRNAの安定性を検討したところ、コントロールsiRNA導入群と比較して、優位にDMP-1 mRNAの分解が促進されたことから、この新規long non-coding RNAはDMP-1 mRNAの転写後安定性に寄与していることが示唆された。さらにin vitro translationで作製した種々のtruncated DMP-1 mRNAとこのlong non-coding RNAの直接的会合を検討したところ、DMP-1 mRNAのexon5への会合がその安定性寄与に重要であることが示唆された。以上よりこの新規long non-coding RNAはDMP-1 mRNAの転写後安定性を促進することで、DMP-1依存性に細胞増殖を制御していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
long non-coding RNAがepigeneticにDMP-1 mRNAの発現を調節するメカニズムの一端を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
DMP-1 mRNAの発現抑制が口腔扁平上皮がん細胞株の増殖抑制を導くメカニズムについて明らかにする。細胞分画法にてRNAを分画抽出すると、他のmRNAが細胞質に比較的高く局在するのに対して、DMP-1 mRNAは主にクロマチン画分に存在する。これはDMP-1 mRNAがmRNAとしてのみならず、クロマチンリモデリングに積極的に関与し近傍遺伝子の発現調節を行っている可能性があると考えられることから、Chromatin immunoprecipitationやRNA immunoprecipitation法などによりその分子基盤を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画全体としては順調に成果を出せているものの、ChIPやRIPなどの比較的消耗品費がかかる実験手技が次年度に行うこととなったために、消耗品費が計画より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度において、上記実験のみならず、予定している実験計画を遂行予定であるために平成29年度末における使用額は使用予定額と同等になる予定である。
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