研究実績の概要 |
我が国では、2007年に超高齢社会に突入した。それに伴い、骨粗鬆症による骨折が問題となっている。日常生活に制限のない健康な生活を長く送るために、骨折の予防薬や治療薬の開発が急務となっている。研究代表者は、以前から、牛海綿状脳症や口蹄疫などの人畜共通感染症の報告のない魚に着目し、その皮、骨、鱗から抽出精製された魚コラーゲンペプチド(FCP)を用いて骨再生に関する検討を行っている。今回、ヒト歯髄由来幹細胞(HDPSCs)を用いてFCPの骨芽細胞分化への誘導能に関して、石灰化の三次元的テンプレートであるコラーゲンに着目し、コラーゲン架橋関連酵素であるリシルヒドロキラーゼ(LH)の遺伝子発現について検討を行った。 本実験で使用したFCPは株式会社ニッピから供与された。FCPの分子量は約2.8kDaであった。智歯周囲炎により抜歯された第三大臼歯の歯髄から分離されたHDPSCsは長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の倫理委員会により使用が承認された(許可番号;1286-4)。まず、HDPSCsを6well皿に5×10^4個播種し、サブコンフルエント後、総濃度が2, 0.2, 0.02mg/mLとなるようにFCPを添加したDMEMで培養を行った。FCP不含のDMEMで培養したHDPSCsを対照群とした。培養3日目に細胞を回収し、total RNAを抽出、cDNAを合成後、LH1, 2のmRNA発現をRT-PCR法により分析した。その結果、2, 0.2, 0.02mg/mL FCP添加群のLH1遺伝子発現比は、対照群と比較して、それぞれ約0.5, 1, 0.2倍、LH2遺伝子発現においてはそれぞれ約1.2, 4.2, 2.2倍であった。今回、0.2 mg/mLという低濃度のFCPがコラーゲンの架橋形成を促進し環境が整うことでHDPSCsを骨芽細胞に分化誘導させる可能性が示唆された。
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