研究実績の概要 |
ラットの脛骨にチタン製のインプラントを埋入し、その後半導体レーザー(波長808nm)を照射した。照射条件はトータルエネルギー量が0J,40J,80J,120J,200Jになるように7日間毎日レーザーを皮膚の上から照射した。照射後4週間そのまま放置し、その後のチタンインプラントを脛骨から除去し、その時の除去トルク値を計測して骨形成とオッセオインテグレーションに対するレーザーの作用を評価した。また、これらの骨組織から連続切片を作成して、ヘマトキシリンーエオジン染色を行い骨形成状態を顕微鏡下で形態的に評価した。 結果として最も高いトルク値を示したのは、120Jのエネルギーでレーザー非照射の0J群に比較して平均50%の高いトルク値を示した。一方、40J,80J照射群ではやや高いトルク値は示すものの、統計学的には有意差は見られなかった。興味あることに200Jのエネルギーでは0J群に比較して有意に低い値を示した。組織学的観察からもインプラント周囲に多く新生骨が認められたのは120J群の脛骨であり、200J群の脛骨では新生骨の形成が著しく減弱していた。40J,80J群ではインプラント周囲に形成された骨組織はコントロール群と変化は見られなかった。 これらの結果は半導体レーザーの照射刺激がインプラント周囲に骨形成を誘導することが示され、その適正な条件として120Jのエネルギーが適切であることが示唆された。また、過度のレーザー照射では骨形成が抑制されることも分かった。骨組織において物理学的な刺激を認識するのは骨細胞であることが知られているが、半導体レーザー照射刺激が骨細胞に影響し骨代謝をコントロールしていることが十分に考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度からは、レーザーの作用のメカニズムを解析したい。その他には骨疾患モデル(OVXラット:骨粗鬆症モデル動物)を作成して、チタン製インプラントを埋入してレーザー照射してオッセオインテグレーションへの作用を調べる。また、骨細胞の機能に注目してin vivo, in vitroの両方からレーザー照射の影響を調べる。特にSclerostin,FGF23,Dmp-1の発現に対する影響を調べる予定である。
|