研究実績の概要 |
骨組織はメカニカルストレスに対して敏感に反応する組織である。本研究の狙いはメカニカルストレスと同様な作用をレーザー照射によって骨形成を誘導できるかを検証することである。低エネルギーのレーザー照射が骨細胞に対してsclerostinとDmp-1という骨代謝調節因子の合成に作用することが分かっている。そこでこれまでに本研究では臨床応用を考慮に入れ、インプラント治療に対してレーザーが有効であるかを骨代謝に対する影響を中心に検証した。特に最終目的であった閉経後骨粗鬆症を示す骨組織におけるインプラント治療にレーザーが有効であるかを組織学的に調べることができた。 閉経後骨粗鬆症のモデル動物として卵巣を摘出したラット(OVXラット)と対照群としての正常ラット(Shamラット)を使用した。OVXラットは骨組織に閉経後骨粗鬆症の症状が現れることを確認し、脛骨に対してチタン製のインプラントを埋入した。Shamラットに対しても同様にインオウラントを埋入した。その後半導体レーザーを2W、60秒、総エネルギー量120Jの条件で照射した。インプラントを埋入したOVX, Sham群のラットに対してレーザーを照射した群と非照射群でのインプラント周囲の骨形成とオッセオインテグレーション(骨とインプラントが接合する度合い)に対するレーザーの影響を調べた。その結果、OVX,Sham群ともにレーザー照射したインプラントの周囲には骨細胞を有する健康な骨組織が誘導され、インプラントをしっかり支える組織像が得られた。また、インプラントの除去を行うトルク値(オッセオインテグr-ションの目安になる)はレーザー照射によって有意に増加した。しかもOVX群とSham群ともにレーザー照射によって亢進したトルク値はほぼ同じ値を示した。これらの結果は閉経後骨粗鬆症患者のインプラント治療に対してもレーザー照射が有効であることが示された。
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