研究課題/領域番号 |
16K11572
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
樋口 直也 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10329609)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗菌光線力学療法 / インドシアニングリーン / Enterococcuss faecalis |
研究実績の概要 |
根管内を消毒するために現在使用されている次亜塩素酸ナトリウムには非常に強い殺菌力が認められ、有効な薬剤ではあるが、一方で、人体に使用する際には十分な注意を払う必要があるほど危険な薬剤でもある。近年、光感受性物質と光照射により、標的となる病原因子を死滅させる光線力学療法が注目されており、細菌を標的にした抗菌光線力学療法(aPDT)を歯内治療領域に応用し、次亜塩素酸ナトリウムに代わる新たな消毒方法を検討している。 これまでaPDTとしては新規性の高い色素であるインドシアニングリーン(ICG)を用い、キトサン処理を行ったICG封入ナノ粒子を作製した。半導体レーザー(810nm)を用い、難治性根尖性歯周炎から高率に検出されるEnterococcus faecalis(E.f)に対するaPDTの殺菌効果の有無を調べ、有意な殺菌性を確認した。そこで、平成29年度は、レーザーの至適照射条件の検討を行った。細菌数の条件を一定にするために、まずE.fの増殖曲線を調べた。吸光度計で濁度(600nm)0.1で、細菌数が1.0x10の8乗CFU/mlとなることを確認した。次に、連携研究者らの照射条件を参考にし、照射時間別、出力別に調べた。照射時間別では、レーザー出力を0.7W/cm2、100ms、50%duty cycleのパルス照射に固定し、照射時間を1、3、5分間とした。その結果、1分間でも有意な殺菌効果を示したが、照射時間が長いほど強い殺菌性を示した。また、出力別では、100ms、50%duty cycleのパルス照射で1分間に固定し、出力を0.7、1.4、2.1W/cm2とした。その結果、出力が大きいほど強い殺菌効果が認められた。しかし、出力が大きいほど、溶液の温度上昇を実感したため、温度変化を含む生体への安全性試験が必要であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想された範囲内の結果であり、研究に関連する大きなトラブルがなかったため、概ね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であり、当初計画していたすべての内容を行う予定である。殺菌効果において有効なレーザー出力条件が決まってきたため、その条件下で生体細胞への影響を調べ、さらにヒトの抜去歯を用いて、実際の根管内における殺菌効果の確認と、進入進度の観察を行う予定である。しかし、計画時の想定は浮遊細菌についての研究であり、実際の根管内の状況を考慮すると、バイオフィルムへの殺菌効果の検討が必要であると考えており、現在検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ粒子作製のための一部の現有備品に変わる新規購入備品の購入を計画していたが、時期が年度末近くになり、実際の購入が次年度になったため。
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