これまで、インドシアニングリーン封入ナノ粒子(ICG-nano/c)を作製し、半導体レーザー(600nm)による光照射で抗菌光線力学療法(aPDT)を行うことによって、浮遊状態にあるEnterococcus faecalisに対する殺菌効果を調べ、レーザーの照射条件を検討してきた。非常に良好な結果が認められたが、実際の感染根管内では細菌はバイオフィルムを形成しているため、2018年度は、E. faecalisのバイオフィルムに対する殺菌効果を調べ、臨床応用を検討した。 初めに、E. faecalisを象牙質片の入った培地で3週間(2日間に1度培地交換)培養し、象牙質片上にバイオフィルムを作製した。固定後、走査型電子顕微鏡(SEM)でバイオフィルムの確認を行った。その後、バイオフィルムに対し、浮遊細菌に行った条件でaPDTを行い、SEMで組織学的観察を行ったところ、明らかな相違は認められなかった。 また、GFPラベルを行ったE. faecalisを用いて、カバーグラス上にバイオフィルムを作製し、共焦点レーザーでバイオフィルムを確認後、同様にaPDTを行い、共焦点レーザー顕微鏡下で組織学的観察を行ったが、明らかな相違は認められなかった。 さらに、ブタおよびヒトの抜去歯を用いて、感染根管モデルを作製し、根管壁にバイオフィルムを作製し、aPDT後、釣菌をして、殺菌効果を調べた。その結果、浮遊状態に対してほどではないものの、有意な殺菌効果が認められた。 以上の結果から、ICG-nano/cと半導体レーザーによるaPDTは、E. faecalisバイオフィルムに対して、形状に影響を及ぼすことはほぼないものの、有意な殺菌効果を認め、感染根管への臨床応用が期待できると思われた。
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