研究課題/領域番号 |
16K11580
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
土谷 昌広 東北福祉大学, 健康科学部, 准教授 (60372322)
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研究分担者 |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (10272262)
渡邉 誠 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (80091768)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90436139)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 顎関節症 / 慢性筋痛 / 好中球 |
研究実績の概要 |
顎関節症に伴う慢性筋痛の多くは索状硬結の存在を特徴とするが,その発症メカニズムは不明であり,治療法も未だ確立されていない.我々は運動後回復期における免疫系細胞の重要性が報告している.そこで,慢性筋痛の新規治療開発を目的として,マウス咬筋部の疲労回復,および治癒過程における好中球の役割と賦活化のメカニズムについて明らかとする.マウス(Balb/cマウス,オス,5週齢)を用い,その咬筋部に咀嚼様運動に伴う筋疲労を誘導し,組織内における好中球やマクロファージの動態について検討した.その後,マクロファージ欠損により,筋疲労の回復遅延が生じることを明らかとする リポゾーム封入クロドロネート(Clo-Lip)の静脈内投与(0.2ml/mouse)により24時間~4日目まで組織内のMφが枯渇する.Clo-Lip投与の結果,マウスの咀嚼様運動の活動量は有意に減少を示した.加えて,主要な筋組織由来サイトカインであるIL-1βの発現量の有意な低下を示した.これらのことから,軽度な筋組織外傷といえる筋疲労時において,Mφには筋機能を維持する機能があり,疲労回復過程において必須な存在であることが証明された. 次にIL-1欠損マウス(IL1KO)を用いて,筋の活動量について我々の咀嚼様運動を負荷するモデルを用いて検討を行った.その結果,IL-1KOの咀嚼様運動量の有意な低下を認めた.くわえて,IL-6の発現量の低下も認められた.IL-6は筋の糖代謝を制御する重要な分子であることが知られれており,以上のことから,Mφにより発現するIL-1がIL-6を介して,筋活動量を維持するうえで重要な働きを示す可能性が推察された.以上のことからも,我々の結果はMφの筋機能維持における機能的役割を示す所見であることが明らかである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗Gr-1(Ly6G/C)抗体投与による好中球枯渇マウスの結果が研究初年度である,平成28年度に順調に示され,来年度はそれらの結果の分子レベルでの解析を進める予定である.本年度に示された,くわえて、IL-1欠損マウスにおける糖代謝障害と易疲労性を示す筋活動量の減少は本研究の仮説を裏付ける上で非常に重要な所見である.当初の研究計画では研究発表は次年度であったが,順調に結果が得られたことにより平成29年度中に,日本補綴歯科学会・総会にてポスター発表を行う予定である.このことからも,研究計画と比較しても概ね良好な進行具合を示すものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
再発性が高く,完治が難しいとされる慢性筋痛の治療法を確立するうえで,そのメカニズムの解明は必須である.本研究の結果から示される,筋組織治癒過程における好中球の役割やIL-6を介した好中球の機能賦活化といった所見は,慢性筋痛の発症メカニズム解明の一助となるだけで無く,免疫療法を基盤とした新規治療法に直結するものである.以上の点を目的とした研究を遂行する場合,次年度の研究計画にIL-6の上流分子であるIL-1欠損マウスを用いた解析を加える必要がある.今後,今までに得たサンプルを用いて,筋障害時時からの回復過程における組織学的,分子生物学的変化に付いて検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの使用数が予定よりも若干少なかったために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の実験の進行具合による不確定な部分が伴うものの、動物や試薬代として使用予定に組み込まれており、課題遂行のために問題無く使用される予定である。
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