研究課題/領域番号 |
16K11582
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松井 裕之 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (10547277)
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研究分担者 |
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30178644)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メカニカルストレス / ERK |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに,骨芽細胞の分化を促進するメカニカルストレスのモードとそのシグナル伝達機構を明らかにしてきた.これまでは細胞外からマトリックスを動かすことによる骨芽細胞の活性化出会ったが,本年度は,骨芽細胞が分化しやすいマトリックス上,例えば生体親和性の高いセラミックス上では,骨芽細胞は強い張力を発揮した状態で接着しており,細胞それ自身が力を発揮することにより活性化していることを示唆する所見が得られた.これに関する検討として,ceria-stabilized zirconia/alumina nanocomposite (NANOZR),yttria-stabilized zirconia (3Y-TZP) およびcommercially pure titanium (CpTi)の試験片上に骨芽細胞を播種しその形態に関する評価を行った.いずれの試験切片上でも骨芽細胞は極性の強い紡錘型となっていた.そこで代表的な細胞接着因子であるインテグリンへの阻害を行った.予想に反し重篤な接着阻害は観察されなかったが,細胞の極性がやや損なわれ立方状の形態を呈した.また,CCK-8アッセイでは細胞生存も低下していた.arginine-glycine-aspartic acid (RGD) 型のインテグリンがこれらの反応に重要であることが示唆されたため,Non-RGD型インテグリンであるα2β1インテグリンの阻害を行ったところ,3Y-TZPおよびCpTiでは細胞生存が上昇したがNANOZRでは変化が認められなかった.これらのことから,①ジルコニアや純チタンでの細胞生存は基本的に培養皿よりも厳しい条件下にある ②iNANOZR上での細胞接着条件は3Y-TZPおよびCpTiと異なる ということが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,NANOZRにおける細胞の接着機構および骨芽細胞の形態と接着による張力が,骨芽細胞自身の分化に与える影響を検討している.これに際し,インテグリン以外の接着分子に着目し,これまでに一次スクリーニング系を確立し探査を行った.これにかかった分子標的に対し現在,RNA干渉法による二次スクリーニングを行っており,関連分子の特定を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
「細胞が発揮する張力が細胞自身の分化を制御する」という,いわゆるメカノバイオロジーの理論はそれほど新しいものではなく,この10年ほど,メカノバイオロジー分野の研究者によりまことしやかに唱えられてきた.一方でこれが科学全体に対しそれほど市民権を得られていない(=多くの科学者を納得させるエビデンスがない)ということは,細胞の張力を直接に測定する方法が無い以上無理からぬことである.本研究はより実学的な方向性を持って展開したい.すなわち,新規生体材料上において,骨芽細胞が良好な生体親和性を示すそのメカニズムについて,具体的な分子の特定により分子生物学的に明らかにする.現在,候補分子に関するRNA干渉法スクリーニングを展開しており,ここで得られた候補分子の機能をより詳細に解析していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
二次スクリーニングに際し,siRNAおよび発現量評価のための抗体の購入が重なるため,次年度にまとめて検討・購入することとしたため.
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