これまでの研究で、CAD/CAM硬質レジンクラウンは、サーマルサイクリングによって影響を受け、クラウン脱離力が低下するというデータを得ている。そこで、平成30年度の研究では、サーマルサイクリングによるクラウン脱離力低下のメカニズムを調べるために、クラウン材料、セメント材料および支台歯材料を用いたせん断応力試験、熱膨張係数測定、弾性率測定、を行った。 クラウン材料としてはセラスマート(GC社製CAD/CAM用硬質レジン)とGN-セラム(GC社製CAD/CAM用ガラスセラミック)を用い、セメント材料としてはパナビア(クラレノリタケ社製レジンセメント)を用い、支台歯材料としてはユニフィルコア(GC社製支台築造用レジン)を用いた。せん断試験の結果、各材料に対するパナビアの接着強度は、ユニフィルコア>セラスマート>GN-セラムの順であった。熱膨張係数は、セラスマート:33.4E-6/K、GN-セラム:12.4E-6/K、パナビア:37.9E-6/K、ユニフィルコア:29.8E-6/Kであった。また、ナノインデンテーション法で測定した弾性率は、セラスマート:8.9GPa、GN-セラム:57.5GPa、パナビア:10.5GPa、ユニフィルコア:13.1GPaであった。これらの結果より、レジンセメントはCAD/CAM硬質レジンクラウンに対して十分な接着を示すが、サーマルサイクリングの過程で接着界面が影響を受けてクラウン脱離に至ることが分かった。その原因としては、レジンクラウンでは、ガラスセラミッククラウンに比べて熱による影響で生じる微小変形が大きいため接着界面に発生する応力が増大することが示唆された。
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