研究実績の概要 |
インプラント補綴は有効な補綴歯科治療の一つであるが,荷重後のインプラント周囲骨吸収が臨床的問題となっている.インプラント周囲骨吸収には,細菌感染であるインプラント周囲炎だけでなく,Occlusal Overloadingといった非感染性骨吸収の存在も報告されている.しかし,それらの病態は解明されていない.そのためには,分子生物学的機構を探索できる動物実験モデルの作製が不可欠である.本研究の目的は,非感染性インプラント周囲骨吸収の動物実験モデルを確立し,その分子生物学的機構を探索することである. まず細菌感染に対する感受性の低いインプラント表面性状を同定した.平滑面(機械研磨面)とミクロ粗面(酸処理面),ナノ粗面(アルカリエッチング表面)のチタンディスク上でStapylococcus aureus 209P株およびStaphylococcus sanguis ATCC 10556株をBrain heart infusion培養液中で2時間培養した結果,ミクロ粗面では陥凹部に固着するように多数の細菌付着を確認した.一方,平滑面上およびナノ表面上では,表面上に少数のコロニーが点在しているだけであるという重要な知見を得た. 次に過荷重、特に圧縮力がインプラント周囲組織に加わった際に、骨細胞に酸化ストレスが加わり、アポトーシスが誘導されることに注目し、抗酸化物質の応用が骨組織の治癒に有効であるかどうかを検証した.その結果,抗酸化物質を作用させた間葉系幹細胞では酸化ストレス誘導性アポトーシスに対する抵抗性が向上すること,抗酸化能を向上させた間葉系幹細胞を骨欠損に局所移植すると急性炎症期の酸化ストレス誘導性アポトーシスが抑制され,骨再生が著しく促進することが示された.本研究成果は生体材料科学の国際誌に掲載された(Watanabe J, et al. Biomaterials, 2018).
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