研究実績の概要 |
日本の急速な高齢化に伴い,欠損補綴を必要とする高齢者が今後急速に増加すると予想される.このような中,下顎遊離端欠損における部分床義歯は遊離端部の沈下により疼痛を生じやすく,義歯も不安定となり,患者のQOLと咀嚼機能は高いとは言えない. 近年,遊離端欠損における部分床義歯に対して,欠損部顎堤にインプラントを埋入し,中間欠損化することにより義歯の安定を計るImplant Assisted Removable Partial Denture (IARPD)が臨床応用され始めているが,ショートインプラントをIARPDに応用した例はない.本研究では,下顎の遊離端欠損患者における6mmのショートインプラントを用い, IARPDの前向き臨床試験を行い,IARPDとショートインプラントの生存率・成功率,患者報告アウトカム,咀嚼能力,食品摂取状況,栄養状態の評価を行う.この術式が確立されることにより,高度下顎骨吸収症例にもIARPDの適用が広がり,超高齢者社会における多くの部分床義歯装着患者の咀嚼能力とQOLの向上が見込まれる.また栄養状態が改善され高齢者の健康増進と年々増加している国民医療費の削減に寄与する事が期待される. 本研究ではヒーリングアバットメントを義歯の支持にしたIARPDのだけでなく,磁性アバットメントを使用したIARPDについても評価予定である. 平成30年度は臨床試験のリクルートが完了した.被験者数は30名(男性13名,女性17名)であった.適切な義歯を装着している者に対し16名にインプラント埋入手術を行った.前年度までにインプラント埋入手術を行った者と合計して28名の埋入手術が終了した(片側に埋入9名,両側に埋入19名,インプラント埋入合計本数47本).
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