本研究では、顔面、耳介等のエピテーゼや義指、義手、義足、人工乳房等のソマトプロテーゼに応用される人工皮膚材料として、超軟質ウレタン樹脂に着目した。また、長期間使用による汗・汚れ・材料劣化に起因する皮膚感染の予防目的で新規無機系抗菌剤「塩化セチルピリジニウム(CPC)担持モンモリロナイト」を応用し、物性、抗菌性、安全性及び耐劣化性について検証することで、「感染・汚染劣化防止機能を有した抗菌性医療用人工皮膚の開発」を目指した。ここで、抗菌成分であるCPC は、医薬品・化粧品などの分野で広く応用されており、その安全性は確認され、黄色ブドウ球菌、溶血レンサ球菌、真菌、う蝕・歯周病菌に対して効果を有するとされる。 平成28年度は、超軟質ウレタン樹脂への新規無機系抗菌剤CPC担持モンモリロナイトの最適添加量を決定するため、添加量2、5、10、15重量%の試料を作製し、黄色ブドウ球菌及びカンジダ菌に対する抗菌性試験(JIS Z 2801)を行った。その結果、黄色ブドウ球菌においては、接種0日目では5重量%以上、1日目及び7日目では2重量%以上で菌は検出されなかった。また、カンジダ菌においては、1日目及び7日目では2重量%以上で菌は検出されなかった。よって、2及び5重量%添加試料についていずれかの添加量を決定するため検証を進めることとした。 平成29年度は、2及び5重量%添加試料について、nonGLP細胞毒性試験(OECDガイドラインTG439/皮膚刺激性試験専用三次元培養ヒト皮膚モデル使用)により、いずれの添加量においても「非刺激性」と判定され安全性を確認した。 平成30年度は、3年間の経年劣化後の物性としてシリコーン樹脂への粘着性について検証し、未添加試料の粘着性をコントロールとすると、2重量%添加試料で42%に、5重量%添加試料で77%に粘着性が低下することが明らかとなった。
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