研究課題/領域番号 |
16K11592
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
呉本 晃一 広島大学, 病院(歯), 講師 (90319583)
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研究分担者 |
谷口 真 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (30529433)
土井 一矢 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (80444686)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インプラント周囲炎 |
研究実績の概要 |
スフィンゴミエリン(SM)は、細胞膜中の『脂質ラフト』を構成する主要スフィンゴ脂質であり、スフィンゴミエリン合成酵素により合成される。近年、脂質ラフトが、細胞膜を介するシグナル伝達、細菌やウイルスの感染を制御すると報告されているが、その分子メカニズムに関しては、不明な点が多い。 近年、SM合成酵素(SMS)欠損はリポポリサッカライド(LPS)誘発性炎症を抑制すること、LPS刺激によるマクロファージの活性化を抑制することなど、SM合成酵素欠損の抗炎症作用の報告がされている。 本研究の目的は、歯周病菌に起因する炎症に対する、SM/脂質ラフトの防御的役割を分子生物学的に明らかにすることで、SM/脂質ラフトを標的とした「細胞膜レベル」での、インプラント周囲炎に対する新たな予防法を開発するための、研究基盤を確立することである。 平成28年度では、SMS欠損マウス由来の胎児線維芽細胞(MEF)における日本脳炎ウィルス(JEV)接着・感染を検討して結果、感染48時間でのJEVの細胞内および細胞外産生、および感染15分のJEV接着・侵入がSMS欠損により抑制され、またこのSM減少によるJEV感染低下が、SMS1導入により回復されたことから、SMS1により産生されるSMがJEV感染に関与することを明らにした。 平成29年度では、MEFに対してTNF-α刺激を行い、炎症のマーカーの一つであるICAM-1の発現を指標として検討を行った結果、野生型マウス由来のMEFではTNFの刺激で濃度・時間依存的にICAM-1のmRNAおよび蛋白の発現が増加するのに対して、SMS欠損マウス由来のMEFではICAM-1の応答が起きないことが明らかとなった。 これらの結果から、SMは歯周病菌由来の感染にも同様に関与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究結果から、TNF-α刺激により炎症のマーカーの応答がSMS欠損MEFでは起きなかったことから、歯周病菌由来のLPS誘発性炎症でも同様の結果をもたらすと予想されるため、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究結果をもとに、SMS欠損マウス由来の口腔上皮細胞および歯髄細胞において、LPS刺激によるTNF-αの応答を検討していく予定である。合わせて、炎症応答を抑制させるSM関連物質についても、明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、研究協力者の施設で主に培養実験を遂行したため、消耗品等の使用頻度が少なかったため、繰越金が生じた。平成30年度は、研究代表者の施設を主に、SMS欠損マウスの培養細胞実験(口腔上皮細胞および歯髄細胞)を計画しており、消耗品の購入を予定している
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