スフィンゴミエリン(SM)は、細胞膜中の『脂質ラフト』を構成する主要スフィンゴ脂質であり、スフィンゴミエリン合成酵素により合成される。近年、脂質ラフトが、細胞膜を介するシグナル伝達、細菌やウイルスの感染を制御すると報告されているが、その分子メカニズムに関しては、不明な点が多い。 本研究の目的は、歯周病菌に起因する炎症に対する、SM/脂質ラフトの防御的役割を分子生物学的に明らかにすることで、SM/脂質ラフトを標的とした「細胞膜レ ベル」での、インプラント周囲炎に対する新たな予防法を開発するための、研究基盤を確立することである。 SMS欠損マウス由来の胎児線維芽細胞(MEF)における日本脳炎ウィルス(JEV)接着・感染を検討して結果、感染48時間でのJEVの細胞内および細胞外産生、および感染15分のJEV接着・侵入がSMS欠損により抑制され、またこのSM減少によるJEV感染低下が、SMS1導入により回復されたことから、SMS1により産生されるSMがJEV感染に関与することを明らにした。 続いて、MEFに対してTNF-α刺激を行い、炎症のマーカーの一つであるICAM-1の発現を指標として検討を行った結果、野生型マウス由来のMEFではTNFの刺激で濃度・時間依存的にICAM-1のmRNAおよび蛋白の発現が増加するのに対して、SMS欠損マウス由来のMEFではICAM-1の応答が起きないことが明らかとなった。 これらの結果から、SMは歯周病菌由来の感染にも同様に関与すると考えられた。
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