研究課題/領域番号 |
16K11593
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
下江 宰司 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (90379884)
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研究分担者 |
平田 伊佐雄 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (40346507)
里田 隆博 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (80170801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジルコニア / 接着 / 微小維持 / 歯冠用コンポジットレジン / 義歯床用アクリルレジン |
研究実績の概要 |
高い強度を持ち、長期安定性や生体親和性に優れているジルコニアは、セラミック材料だけでなく“生体にやさしい”とされる高分子材料との複合化も必須である。本研究では、新規に考案した微小維持装置の応用による歯冠用コンポジットレジンおよび義歯床用アクリルレジンとの複合化に重点をおき、広く歯科治療において応用可能な新技術を開発することを目的としている。新規微小維持装置は、レーザーによりジルコニア表層を格子状に加工して維持を得るもので、その深さや幅は結合させる材料やジルコニアの種類によっても異なると考えられる。そのため2 種類のジルコニアそれぞれに適切な形状となる加工設定と、歯冠用コンポジットレジン、義歯床用アクリルレジンの結合に最も効果的な微小維持装置の溝の深さ、幅、間隔をを本年度に検討した。 1)加工形状の最適化:考案した微小維持はレーザー加工のため、その形状は意図していたものと若干異なった。特にNANOZRでは角が丸くなり過ぎることによる維持不足が懸念されるため、レーザーの出力等を調整し、設計に近似した形状となる条件の検討を行った。 2)効果的なサイズの検討:試作条件のサイズは深さ、幅、間隔を40μmとしたが、最適なサイズは歯冠用コンポジットレジン、義歯床用アクリルレジンそれぞれの材料や、ジルコニアの種類によっても異なると考えられるため、想定する修復物の厚さや強度を考慮し、より効果的なサイズの検討を行った。 3)微小維持装置単独の評価:2種類のジルコニアの加工形状を最適化し、それぞれのレジンに効果的なサイズと分析された数種類の条件について、微小機械的維持装置単独による結合試験を実施し、その効果について評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)加工形状の最適化はNANOZRレーザーの出力等を調整しにより、Y-TZPと近く、設計に近似した形状となる条件を特定した。 2)効果的なサイズの検討では、試験条件のサイズ(深さ、幅、間隔)を、従来のリテンションビーズの大きさや幅と維持力の関係を参考に50μm、75μm、100μmに設定した。 3)微小維持装置単独の評価では、それぞれのレジンに効果的なサイズと分析された数種類の条件について、微小機械的維持装置単独による結合試験を実施できた。 これらのことから、進捗状況は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は微小維持装置とアルミナブラストの併用効果、表面のぬれ、ジルコニアの結晶状態の違いによる相互作用の解明を目的として、以下の検討を予定している。 1)微小維持とアルミナブラストの併用効果の検討:微小維持と従来のアルミナブラストの併用効果について、嵌合力の面から検討する。評価には、表面粗さ計や走査型電子顕微鏡を用いて表面性状を分析するとともに、万能試験機で機械的嵌合力のみによる結合試験を行い、その有用性について検討を行う。 2)ジルコニア表面の結晶相の違いによる影響の検討:ジルコニアは応力や熱処理により、表面の結晶相が正方晶や単斜晶に変化する。我々はその結晶相の違いが歯冠用コンポジットレジンの接着に影響を与えることを明らかにした。本研究で用いる微小維持において、相変態が結合強度に及す影響を2種のレジン材料およびジルコニアでの解析を行う。 3)微小維持装置と親水化処理の併用効果の検討:被着面のぬれが接着強さに関係していることは以前より知られている。我々はアルミナブラストだけでなく熱処理においても、ジルコニア表面の接触角を有意に低下させることを報告した。一方、これらはジルコニアの結晶相まで変化させてしまう。これらの処理に加え、結晶相の変化が無く、接着性向上効果があるとされているUVオゾン処理(新規設備備品)による親水化処理による併用効果の影響について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画の金額と若干の差が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰金額は少ないため,翌年度分とあわせて調整を行う。
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