顎骨骨髄中に存在する間葉系幹細胞(MSC)は腸骨由来MSCと同等かそれ以上の骨分化能を有し、歯槽骨の増生を図るための有望なセルソースと考えられる。一方、顎骨MSCの生体内での骨増生能にはバラつきがあるため、細胞移植前に骨増生のポテンシャルを予見することが重要である。しかし、現時点で生体内での骨増生能を判定する有効なマーカーがない。骨増生を予見する因子として、今回我々は顎骨MSC中に発現するmiRNAに着目し、miRNA発現解析によって、生体内で確実に骨増生効果を示す顎骨MSCを識別し得るか検証することを目的とした。 当該年度は、5名のドナーより採取・培養された顎骨MSCを用いて、in vitroでの骨分化パターンをALP活性定量、アリザリンレッド染色、骨分化関連遺伝子発現によって評価を行った。解析の結果、高骨分化能を有する3例、低骨分化能の2例に分けることができた。次に、それぞれの群間で発現するmiRNA発現パターンの解析を行った結果、高骨分化能の顎骨MSCで8倍以上発現が高いmiRNAが6種類、低骨分化能の顎骨MSCで8倍以上発現が高かったmiRNAが6種類同定された。さらに4倍以上の変化を有する因子を合わせるとそれぞれ40因子程度同定された。 現在、上記の評価によって得られたmiRNAがターゲットとするgeneの解析を実施中で、骨分化に関連するgeneを標的とする新規のmiRNAの探索を行っている。 また、顎骨骨髄由来MSC以外に腸骨骨髄由来MSCのmiRNA発現解析も行っており、局在の違いによるMSCの特徴の解析も実施中である。
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