研究課題/領域番号 |
16K11615
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
井川 知子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (70552389)
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研究分担者 |
小川 匠 鶴見大学, 歯学部, 教授 (20267537)
重田 優子 鶴見大学, 歯学部, 講師 (40367298)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 統計アトラス / 計算解剖学 / CADCAMシステム / デジタルデンティストリー / セグメンテーション |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は「顎顔面頭蓋や歯列,歯の形態の様々なデジタル情報を用いて統計解析を行うことにより被験者個別に最適な解剖学的形態を算出,CAD/CAM技術に応用し,機能に即した顎顔面補綴装置や口腔内の修復装置を設計・製作すること」である.これにはCTによる形態の3次元化が必要となるが,現在行っているCT値による領域の抽出では,殆どの部分にマニュアルでの作業が入るため,時間がかかり,その精度は術者間誤差が大きいと言わざるを得ない.そこで,本年度はCTデータを収集し,そのデータから自動で硬組織,軟組織を抽出するソフトの開発を行った. 鶴見大学歯学部附属病院に来院し,CT撮影を行った患者のうち,解析可能な症例を抽出した.包括因子として口腔内および顔面領域の撮影範囲に金属がなくアーチファクトが存在しない症例とし,除外因子として顎顔面の形態的変化を伴う疾患とした.症例は16名(男性:5,女性:11)であり,平均年齢27.29±13.28歳であった.まず選択した1症例に対し,CTデータから骨格,筋,軟組織のセグメンテーションをマニュアルで行い.正解データを製作し,これを用いて自動セグメンテーションソフトの開発を行った.対象となる組織は顎二腹筋,オトガイ舌骨筋,顎舌骨筋,茎突舌骨筋,舌,軟口蓋,外側翼突筋,咬筋,内側翼突筋,側頭筋の10個とした.これら自動抽出された軟組織をそれぞれの骨格データに位置づけソフト内で軟組織の形態および位置を確認できるよう設定した.これには研究代表者を含め,鶴見大学の研究分担者,研究協力者の内,十分な臨床経験を有している歯科医師が行った.その結果,すべての症例で軟組織10個が自動抽出可能となり,骨格と同時に表示可能であった.しかし,CTスライス画像と自動抽出された輪郭を比較すると,ズレが生じている部分も多く,精度向上を目指したアルゴリズムの調整が必要と思われた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画による本年度の計画はデータ収集および自動セグメンテーション技術の開発であり,実施した研究においても被験者のデータ処理および自動セグメンテーションが終了していることから計画に遅れはないものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,マニュアルセグメンテーションデータを参考に自動セグメンテーション方法の開発に入る.これは奈良先端科学技術大学院大学の連携研究者が担当し,自動セグメンテーションデータの製作を目標とする.セグメンテーションは各スライスにおいてCT値に基づき領域を選択し,組織を抽出する技術である.まずマニュアルセグメンテーションデータをテンプレートとして被験者のデータと対比し,選択領域の非剛体レジストレーションを行う.これにより,領域が自動的に選択され,それぞれの組織のセグメンテーションが可能となる.しかし,これまで医科領域での自動セグメンテーションと同様にCT値のみで行った自動セグメンテーションでは精度が乏しく,実際の臨床には使用できないと思われる.統計アトラスを用いて解剖構造に関する事前知識を統合することで精度の向上が提案されている*)が顎顔面領域については新たに検討を行う必要がある.CT値のみならず,さらなる拘束条件を追加する必要ある. *)Okada, T., M. G. Linguraru, M. Hori, R. M. Summers, N. Tomiyama and Y. Sato(2015). Abdominal multi-organ segmentation from CT images using conditionalshape 8211;location and unsupervised intensity priors. Medical ImageAnalysis 26(1): 1-18.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった3次元再構築ソフトをデータの収集状態およびデータ解析方法の検討の結果から選択し,購入する予定であったが,年度内に購入できなかったため次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究実施により平成29年度に行うデータ解析(手動セグメンテーション)には予定より時間がかかることが予想される.計画調書にも記載したとおり,研究の進行を遅らせないようPC(ワークステーション)を1台追加し,作業に支障が出ないよう配慮することから,PCの追加購入を予定している.また,平成28年度に選択した3次元再構築ソフトを購入する予定である.
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