研究課題/領域番号 |
16K11616
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
武部 純 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50295995)
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研究分担者 |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
帖佐 直幸 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (80326694)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯学 / 遺伝子 / 歯髄幹細胞 / 細胞内シグナル伝達 / 純チタン / 口腔インプラント / 陽極酸化・水熱処理チタン / 傾斜機能型ナノハイブリッドインプラント |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究においては、傾斜機能型ナノハイブリッドインプラントの表面性状の効果がラット由来歯髄幹細胞(rDPSCs)へ与える影響を検討すべく、研究試料上におけるrDPSCsの増殖・分化に関する検討を行った。研究試料としては、未処理の純チタ(cpTi)、陽極酸化処理を施した純チタン(AO処理cpTi)、AO処理cpTiへ水熱処理を施した純チタン(傾斜機能型ナノハイブリッド; SA処理cpTi)用いた。rDPSCsは、6週齢雄性SDラットの上顎中切歯より歯髄組織を採取後、トリプシンコラゲナーゼを用いた酵素処理によって分離・培養を行い各試料上にて培養し、細胞増殖活性測定と走査型電子顕微鏡(SEM)による細胞形態分析、Real-time PCR(RT-PCR)法による骨形成関連遺伝子発現解析を行った。細胞増殖活性は、各研究試料間においては有意な差は認められなかった。一方、SEM分析では、cpTiとAO処理cpTiに比較してSA処理cpTi上ではrDPSCsの細胞突起が陽極酸化被膜とハイドロキシアパタイト結晶へ密接に接着した所見が確認された。RT-PCR分析では、cpTiとAO処理cpTiに比較してSA処理cpTi上におけるオステオポンチン(OP)とオステオカルシン(OC)発現がともに有意に高い値を示した。我々は、傾斜機能型ナノハイブリッド(SA処理cpTi)の表面性状(表面形状と物理化学的な表面性状)が細胞外マトリックスタンパクを介して細胞膜貫通細胞接着レセプターであるインテグリンを活性化させ、細胞内シグナル伝達系に作用することで細胞分化調節機構が活性化され、細胞接着機構と遺伝子発現に影響を与えたものと推察している。現時点までのプロジェクト研究結果から、SA処理法はrDPSCsの骨関連遺伝子発現を促進させることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、SA処理cpTiインプラントの臨床への実用化に向けた検討を目的として、前年度にはフローサイトメトリーによるラット由来歯髄幹細胞(rDPSCs)の表面抗原解析、骨芽細胞への分化誘導解析の結果より、rDPSCsの多分化能を確認し培養が確実となった。この結果より、平成29年度においてはSA処理cpTi上での細胞増殖・分化能を解析することを目的として、SA処理cpTi上でのrDPSCsの培養モデル構築が確立され、本研究報告に示す結果を得ることが可能となった。平成29年度に取得した結果は、平成28年度で得られた研究データを支持するものであり、次年度への計画に着手できる準備が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
ラット由来歯髄幹細胞(rDPSCs)を用いて下記の研究を行う予定で既に一部は進行している。SA処理cpTiの研究試料製作の継続、SA処理cpTi表面上でのrDPSCsからの骨形成関連遺伝子の解析の継続、タンパク質レベルでの検証を予定している。さらに、in vitro研究により得られた結果をもとにして、口腔インプラント/骨組織界面における傾斜機能型ナノハイブリッドインプラントのin vivoモデルを構築し、臨床応用へ向けた検証を実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に計画した研究が終了し、当初予定の実験材料購入を次年度に繰り越すことが可能となったため。
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