研究課題/領域番号 |
16K11617
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
田口 洋一郎 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (60434792)
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研究分担者 |
楠本 哲次 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70186394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化チタン / グルコース / 硬組織分化誘導 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
近年では,様々なインプラントフィクスチャーの表面制御が開発されているが,骨結合型インプラントの開発から50年経ち,インプラント周囲炎が急増している.また,糖尿病は発症・進行で歯周病と双方向性があり,インプラントの成功率を低下させるとの報告も散見される.本研究では,グルコース濃度がナノレベル表面制御構造チタン表面上での硬組織形成に及ぼす影響について検討した. 材料は,JIS規格2級純チタンを研磨後に10MのNaOH水溶液に室温で24時間浸漬・攪拌しTitania Nano Sheet構造(TNS)を析出させ,TNS析出チタンと非析出チタンをそれぞれ600℃で1時間焼成し,実験に使用した.生後8週齢のGK雄性ラット大腿骨骨髄から骨髄間葉細胞を単離し,供試した.各種チタン表面上に播種後,空腹時血糖値を参考に,5.5mM,8.0mM,12.0mM,24.0mMの4群に調整した培養液で硬組織分化誘導を行い,ALP活性,Osteocalcin(OCN)産生,細胞外マトリックスへのCalcium(Ca)とリン(P)の析出ならびに炎症性サイトカインの発現について検討した. 1週目のALP活性は両群でグルコース濃度の上昇とともに減少した.これとは対照的に,硬組織分化誘導4週目OCN産生量とCa析出量がグルコース濃度8.0 mMで著明に減少したが,8.0 mMからはグルコース濃度上昇とともに増加した.Ca/P比はOCNおよびCaと類似した傾向を示した.炎症性サイトカインは,高グルコース濃度で高い発現を認めたが,表面制御構造チタン表面では,高グルコース濃度でも発現は上昇しなかった. 以上の結果から,高グルコース濃度では硬組織形成は増加したが,質は低下した.また,ナノレベル表面制御構造チタン表面上では,硬組織形成および抗炎症性は増加したが,硬組織の質はグルコース濃度に依存していることが認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細構造表面の観察やin vitroの実験系に関しては,当初の予定以上の成果を出している。現在,日本歯周病学会で口演発表を行い,論文に関してもJournal of Periodontal Researchに投稿し掲載予定している。インプラント周囲炎を模倣した形での炎症性サイトカインや歯周病原細菌による刺激後の硬組織分化誘導系も同時に進めており,平成29年度に実験の目途をたてたいと考えている。 それに反してin vivoの実験系の進行状況が遅れている。来年度はインプラント体埋入モデルの確立に目途をたてたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
インプラント周囲炎モデルの実験系は炎症惹起因子として,IL-1beta, TNF-alphaなどの歯周病原性の炎症性サイトカインやPorphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitansなどの歯周病原細菌を濃度を振り分けて行う。細胞増殖試験などで至適濃度を策定し最終的には1種類の濃度で硬組織分化誘導を行う。また,講座研究室内に糖尿病患者から採取した上記歯周病原細菌の臨床分離株を多数所有しており,標準株での炎症惹起実験での実験を終了後,その結果を対照に比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,論文の掲載がもう少し早くなるものと予測し別刷代などを予定していたが,実際の掲載が次年度となり別刷代などの請求が次年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の使用計画に加えて,掲載可となった論文の別刷代や英文校正代に支出する予定である。
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