研究実績の概要 |
本研究では、根面う蝕における辺縁漏洩や2次う蝕などの問題を解決するために、う蝕原因菌の増殖を抑え、歯の再石灰化を促す効果を付加するための3種類の無機フィラーを開発すること目的とした。 再石灰化を促す材料として、リン酸リリース用無機フィラーは、Zrで修飾したマグネシウム鉄層状複水酸化物(MgFeZr-LDH)を文献(R. Chitrakar et.al., J. Colloid Int. Sci., 349, 314 (2010) )に記載の方法に従って合成し、リン酸溶液に浸漬しリン酸を吸着させた。カルシウムリリース用無機フィラーは、カルシウム溶出性の無機フィラーとして歯科材料としても一般に用いられる市販のバイオグラス(G018-144)、ウオラストナイト(KAP_150)、セピロライト(P-200VV)の3種類を用いた。 グラスアイオノマーセメントに機能性を付与するための無機フィラーを開発することが目的であるが、多量の無機フィラーをグラスアイオノマーセメントに添加し、かつ、均一分散させることは熟練技術を要する。そこで本研究では、均一分散が容易なウレタン系ポリメタクリレート樹脂(UDMA:Urethan dimetacrylate、HEMA:Hydroxyethyl metacrylate)に無機フィラーを添加した後、光硬化させた樹脂サンプルを用いて評価した。 本年度は、上記の方法により、3種類のカルシウムリリース用無機フィラーのうち、再石灰化促進効果が最も高いフィラーを選定し、次に、再石灰化促進に好適なリン酸およびカルシウムリリース用無機フィラーの添加率を明らかにするために、それぞれの無機フィラーの添加量を変えて樹脂サンプルを作製し、人工体液中でのアパタイト形成能を評価した。
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