研究課題/領域番号 |
16K11622
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小林 賢一 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (00170316)
|
研究分担者 |
猪越 正直 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (90753715)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ジルコニア / 陶材 / 界面 / セラミックス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ジルコニアを用いたオールセラミック修復物に多く見られる、前装用陶材の破折・剥離(チッピング)の原因をナノスケールの解析によって明らかにし、チッピングの少ないオールセラミック修復物を製作するための手法を確立することである。 実験1:表面処理を施したジルコニアにおける、ジルコニア・陶材の界面の解析 歯科用高透光型ジルコニア(KATANA HT, Kuraray Noritake)を加工・焼成し、直径14.5mm x 0.5mmの円盤試料を作製した。その円盤試料に対し、焼成のみ(表面処理なし)、歯科用ダイヤモンドポイントによる研削、アルミナ粒子によるサンドブラストの3種類の表面処理を施した(n = 3)。次に、表面処理による高透光型ジルコニアへの影響を調べるため、X線回折とRietveld法を用いた結晶構造の解析を行った。 X線回折の結果、焼成したままの高透光型ジルコニアは、従来型のジルコニアとは全く異なった結晶相の組成を示すことが明らかとなった。具体的には、従来型のジルコニアに比べ、高透光型ジルコニアでは立方晶が多く(41 wt%)、正方晶が少ない傾向(57 wt%)にあった。さらに、歯科用ダイヤモンドポイントによる研削、アルミナ粒子によるサンドブラストといった表面処理が、高透光型ジルコニア表面の結晶構造を変化させることが示唆された。アルミナ粒子によるサンドブラストに比べて、歯科用ダイヤモンドポイントによる研削は、菱面体の割合が多くなることが明らかとなった。 次いで、これらの表面処理を施した試料にメーカー指定の陶材を厚さ1mmになるよう築盛し、ジルコニア・陶材複合体試料を作製した(各表面処理につきn=10、合計n=30)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、初年度に電子顕微鏡を用いた形態学的解析まで進める予定であったが、ジルコニア・陶材複合体試料作製に時間がかかった。そのため、本年度の進捗状況は、1)表面処理とX線回折による結晶構造解析、2)電子顕微鏡観察のためのジルコニア・陶材複合体試料の作製までを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
作製したジルコニア・陶材複合体(各表面処理につきn=5、合計n=15)のジルコニア・陶材界面を走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、ナノスケールでの形態学的解析を進める。また、ジルコニア・陶材界面部分に対してマイクロラマン分光解析を用いた結晶構造解析、残留応力測定を行う予定である。 その後、ジルコニア・陶材複合体における、ジルコニアと陶材の接着強さの測定を予定している。 最終年度には、過去2年間の結果を総合し、ジルコニア用陶材に適切な熱膨張係数を模索する実験を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた電子顕微鏡を用いた形態学的解析まで研究が進まなかったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度に実施できなかった電子顕微鏡を用いた形態学的解析の電子顕微鏡使用料として使用予定である。 また、その後、ジルコニア・陶材複合体における、ジルコニアと陶材の接着強さの測定を実施するための試料作製費用として使用する予定である。
|