研究課題/領域番号 |
16K11623
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
騎馬 和歌子 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (10523087)
|
研究分担者 |
橋本 正則 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00337164)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 保存修復学 / 無機セメント / イオン溶出 / ガラスフィラー / バイオアクティブ |
研究実績の概要 |
CaO-Al2O3-SiO2-F系ガラスのレシピをもとに、まず、CaO-Al2O3-SiO2系ガラスを作製する。原料Al(OH)3, CaCO3, Na2CO3, SiO2, Al(PO3)3を白金るつぼに入れ、1200℃~1500℃にて数時間溶融を行ったのち、ステンレスの容器にて急冷し、試作ガラスを得る。 この際、溶融温度、原料投入時間、溶解時間、および徐冷時間および温度など、条件から決定していく。原材料が溶けてガラスが作製できるまで、原材料とその量および溶融条件を見直していく。 結果:現在使用している炉では実質1400℃までしか温度が上がらず最初に計算したレシピでは原料が溶融しないことが分かったので、原料にアルカリ(Na2O)を増やし、1400℃まででガラスが作製可能か検討したところ、透明なガラスが得られなかった。そこで、電気炉を改良し、小さい電気炉を作製、1500℃まで温度が上げられる炉の作製に成功した。そこで最初のレシピで原料を溶かしたところ、ガラスを得ることができた(①)。①のガラスのCaOを半分SrO2に置き換えたガラス作製を試みたが、ガラス化しにくく、ブロックを覚ましにいれると結晶化が始まったように表面が白くなることが分かった。CaOやSr2Oは量を増やすとガラス化しにくくなるため、ガラス化しやすいようにベースの組成を改良する必要があることが分かった。 ①の試作ガラスを遊星ボールミルを用いて、粒径10μm以下かつ平均粒径5μm以下となるように、ジルコニアボール (直径10mm)に対するガラスの量 (wt%)、回転数 (目安150rpm)、および粉砕時間を設定していく。結果:今回作製できたガラスはバイオガラスと比較してとても硬く、20時間の粉砕でようやく粒径10μm以下かつ平均粒径5μmの粉末が得られることが分かった。粒形はSEMにて評価を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は試作ガラスの作製方法の検索および、それに伴う高温まで温度が上げられる電気炉の作成に時間を要した。 試作ガラスが必ずしもすんなり溶けるものとは限らず、何度も試行錯誤を繰り返したので、作成可能なガラスの検索にも時間がかかっている。 また、今回作成したガラスはとても硬いため、粉砕の条件設定にも時間を要した。 今後もこの作業を行ったり来たりを繰り返しつつ、新しいガラスの可能性を探っていくことになると考えられるので、セメント作成までは道のりは遠く、遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、試作ガラスの作製および試作セメントの作製に重点を置く。作製可能な試作ガラスが完成しても、セメントのフィラーとして使用できるかという次の関門があるので、試作ガラスの作製と試作セメントの作製を往復しつつ、試行錯誤をして、作りたいカルシウムイオンとストロンチウムイオンが適度に溶出するようなセメントの開発を行っていく。 ガラスは当初想定していたようには、溶解しないことが多いので、今後も試作ガラスの作製には時間を要すると考えられる。 セメントが完成したら、その評価には細胞実験を想定しており、細胞の増殖、分化、石灰化に対する影響を評価できるところまでに至れるよう尽力する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は試作ガラスの作製方法の検索および作製、電気炉の改良、ガラス作製条件の検索の試行錯誤を主に行ってきたので、るつぼやガラス作製材料は、既に所有しており、電気炉の部品などにしか費用は使用しなかった。学会参加も、予定していたものが九州の地震により参加を辞退したりしたため、旅費もほぼかからなかった。これらのことが次年度使用の主な理由であると考えている。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、作製したガラスの分析にICP発光分光分析や、その分析の制度を上げるために、外部委託により分析を行う可能性が出てくるので、その分析にかかる費用が増えることが考えられる。また、実験が進めば、硬組織形成細胞を使用した実験を開始するので、細胞培養が関わる実験の試薬や消耗品の購入が増えることが予想される。学会参加も、今年度は積極的に行い、情報収集を行う予定もしている。
|