上下顎歯列の過剰な接触は歯痛、頭痛などを初めとする様々の歯科的障害の原因となることが報告されている。本研究はこの問題を解決するために、日常生活中の上下歯列の接触を客観的に観察する装置を開発し、臨床応用を行うことを目的とする。本研究では生体内を伝播する音波である骨伝導音(Bone Conduction Sound)を利用した歯列接触モニタを開発し、上下顎歯列の接触状態を連続して記録する方法を確立することを目的とした。 歯列接触を検出する骨伝導音の測定記録に同期して、携帯型筋電図測定器ワイヤレスEMGロガーIIを用いて計測した筋電図記録を同期して解析することによって、歯列接触と咀嚼筋活動の関係について分析を行った。解析用の数値解析ソフトウェアとしてMATLAB(MathWorks社、米国)を導入し信号分析に取り入れることで、骨伝導信号と筋電図記録を高精度に同期させることとともに、骨伝導音として用いた信号の高精度なフィルタリングが可能となった。これによって会話などの環境音や、咀嚼時に生じる食品の破砕音などの雑音の影響を除去して、骨伝導音のみを高確度で判定することが可能となった。さらに市販されている咀嚼カウンターの中から、咀嚼時の外耳後方の皮膚の変位から咀嚼を計測するbitescan(シャープ株式会社)を用いた同時測定を行うことで、測定記録の妥当性確認を行った。 これらの装置を用いて健常被験者10名(女性10名、平均年齢22.0±0.22歳)を対象として、日常生活動作の例として昼食時の歯列接触状態について計測を行い、歯列接触の回数やその発現スピードなどについて解析を行った。その結果、被験者 10名の昼食時における歯列接触の発現回数の平均は544±449回で、 そのスピードは毎分55.7±14.4回/分であった。
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