研究課題/領域番号 |
16K11626
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
河野 文昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (60195120)
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研究分担者 |
浜田 賢一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (00301317)
篠原 千尋 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (50332820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | βーTCP / ボールミリング法 / 注入性 / 強度 / 粉液非 |
研究実績の概要 |
高注入性と高強度を両立させ,短時間で硬化するβ-TCPセメントを開発し,セメントの粉液比を変化させて,セメントの特性をさらに向上させることをめざした。3D-printerでの利用をめざすために,セメントペースト注入性を検討した。 市販のβ型3リン酸カルシウム粉末(コントロール:cβ-TCP)をボールミリング法によりメカノケミカル的に改質した粉末(改質β-TCP:mβ-TCP)を作製した.β-TCP粉末はまず塩化カルシウム(CaCl2)溶液(1液),次いでリン酸2水素ナトリウム(NaH2PO4)溶液(2液)で練和した.粉(g)と液(ml)の混合比(P/L)は従来の粉末:1液:2液=1 : 0.25 : 0.25(以下,P/L=2.0)から1 : 0.2 : 0.2(2.5)および1 : 0.18 : 0.18(2.78)に増加させた. 注入性は,cβ-TCP(2.0)は充填後5分で注入できなくなったが,mβ-TCP(2.0)は7時間まで注入可能で, P/Lを増加させたmβ-TCP(2.5)は20分まで注入可能だった.しかしP/Lをさらに増加させたmβ-TCP(2.78)では5分で注入できなくなった.P/Lを増加させると注入性は低下するが,P/L=2.5では実用的な注入性を示すと考えられた. 硬化体の強度は,mβ-TCPセメントはP/L=2.0の時はCS,DTS共に初期強度は低かったが,P/L=2.5ではCS,DTS共に練和後1時間で高い強度を示した.P/L=2.78と2.5では同等であった.また,mβ-TCP(2.5)の強度は練和後3日目で飽和したが,mβ-TCP(2.0)およびmβ-TCP(2.78)よりも高かった. P/L=2.0から2.5に増加させると注入性は低下するが,臨床的に利用可能な注入性は維持し,強度は向上することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
練和したペーストを成形可能な3D-Printerの選定に時間がかかった。開発中のβ-TCPの材料特性の設計にも大きく影響するため,3D-Printerの方式を十分検討し,購入した。開発中のβ-TCPの注入性を検討し,粉液比との関連を明らかにし,本年度へ研究が繋がる結果が得られた。また,強度においては擬似体液中でも測定した。3Dプリンターによる成型性と形態保持性の検討がまだ行っておらず,やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.生成実験の再検討と3Dプリンターで作製するScaffoldの構造の検討 リン酸カルシウムセメント硬化体の溶解性および諸性質の詳細な検討をもとに,強度があり,骨形成能に優れるScaffoldの構造について検討する。表面は多孔質構造で,中心に行くほど充実体になるような構造を考えている。これら試作し,形状を付与した材料の力学特性を検討し,材料特性の最適化を試みる。 2.セメント硬化体の生体吸収性,生体親和性及び骨伝導性の評価 上記項目で行う細胞培養試験(RT・PCR法)の結果から,スクリーニングされたセメント硬化体について,硬組織および軟組織埋入試験(家兎)により骨伝導性,生体親和性および生体吸収性などを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同利用を行うために,他研究者と共同で3D-Printerに使用するために卓上型ロボットを購入した。そのため,次年度使用額が生じた。3D-Printerに応用可能な卓上型ロボットを購入したため,よりスペックの高い器機の購入が可能であった。
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次年度使用額の使用計画 |
3D-printerのヘッドによって構築できるスキャフォードの精度が変わってくる。計画にはなかったが,プリンターヘッド改造のための消耗品の購入に充てる予定である。
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