研究課題
接着性レジンセメント等に多用されているモノマー(TEGDMA、HEMA、MMA等)が免疫系細胞のマクロファージに及ぼす影響を、昨年同様、解毒と抗酸化の両面から評価した。また、グラム陰性菌の外毒素であるLPSの交差影響も評価した。1. TEGDMAモノマー濃度がマクロファージ(PMA誘導THP-1細胞、24h培養)内でのグルタチオン量に及ぼす影響を蛍光試薬によって評価した。低濃度ではグルタチオンはTEGDMAと化学結合し効率的に解毒され細胞生存率も維持されたものの、高濃度(IC50の2.5mM/L以上)では細胞内のグルタチオン量が減少し、細胞生存率の低下に繋がった。グルタチオンを抗酸化に使用できず、フリーラジカルによる遺伝子傷害から細胞のアポトーシスを招来したと考えられた。還元型グルタチオンは細胞内での合成がすぐできないことも確認された。LPS刺激はマクロファージ内でのグルタチオン量に及ぼす影響が小さく、TEGDMAモノマーへの解毒効果を若干減少させる傾向が認められた。2. グルタチオンのマクロファージ内での細胞内局在を観察する前段階研究として、FITC標識のポリスチレン粒子をマクロファージに貪食させ、細胞内での取り込みと局在を購入した蛍光顕微鏡で観察した。3. 生体防御を司るNrf2 pathway等についても遺伝子発現から検討を試みた。特に、Nrf2は親電子性試薬や活性酸素の刺激によりKeap1分子による抑制から逃れて核移行し、解毒酵素や抗酸化酵素群の遺伝子発現を活性化する。TEGDMAモノマーとLPSがNrf2活性化に及ぼす相互作用について検討を加えたところ、その影響はいずれも小さく、他のシグナル伝達系が優性と考えられた。
3: やや遅れている
細胞内のグルタチオンの測定を行ったが、いまだ、細胞内のグルタチオンの局在の観察に成功していないため研究がやや遅れていると判断した。さらに、グルタチオンの産生に関わる遺伝子の発現状態を調べる研究も完成されていない。
モノマーに晒されたマクロファージ細胞内でのグルタチオンの局在の観察を是非行いたい。また、モノマーとグルタチオンの複合錯体の視覚化を試みたい。また、細胞を歯肉上皮細胞系に変え、モノマーに晒された場合の、細胞の解毒と抗酸化の状態を調べることを希望している。口腔内を想定した場合、細菌毒素成分のLPSの交差影響についても調べる必要がある。さらにグルタチオン産生や代謝に関わる遺伝子の発現状態についても詳細に調べる予定である。
グルタチオンの細胞内局在観察とグルタチオン産生に関わる遺伝子発現の研究が少し遅れたため、その分の研究経費が翌年度(最終年度)に持ち越しとなった。持ち越し分は最終年度に記載の研究で使用する予定である。
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