補綴歯科領域の治療予後を左右する重要なリスクファクターである睡眠時ブラキシズムは多因子疾患であり,個々の患者に応じた治療法の確立が求められているが,薬物を用いた治療法は臨床的にいまだ広く一般には用いられていない.研究代表者らが行なった先行研究における,α2アドレナリン受容体作動薬であるクロニジンの睡眠時ブラキシズム抑制効果に個人差が認められた結果を踏まえ,本研究では薬剤感受性に関連する遺伝子多型を明らかにすることを目的とし,適切な薬物使用による睡眠時ブラキシズム抑制のオーダーメイド治療の確立と,自律神経系の関与からの発症メカニズムの解明を目指した.被験者の睡眠時ブラキシズムレベルの評価について,睡眠時ブラキシズムが多因子疾患であることや全身状態の変化も考慮して,過去に睡眠検査室におけるPSG検査を受けたものに対しても現在のブラキシズムレベルが変化している可能性を考え,日常睡眠環境で測定可能な,咬筋EMGチャンネルを付加した脳波記録簡易睡眠ポリグラフ検査装置を用いたPSG検査を被験者に対して実施した.咬筋EMGについては,1名の歯科医師がマニュアルにてSB Episodeの判定を行なった.先行研究での薬物療法によるランダム化比較試験の結果を踏まえ,被験者を,クロニジンレスポンダーとノンレスポンダーの二群とした.これらの被験者から末梢静脈血の採取を行なって,ゲノムDNA を抽出し,ADRA2A遺伝子(α2Aアドレナリン受容体遺伝子)におけるrs1800544(upstream transcript variant)およびrs553668(3' prime UTR variant)に関するSNP解析を行ない,群間比較を行なった.
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